第３１２話 ９３カ国目 マラウィ 「野郎二人でクリスマス・・・。」  「写真を撮るぞ！アチャー！」 格好良く構えた子供たち。
アラスカ出発 １９９２／４／１〜マラウィ １９９７／１ マラウィ出国までの走行距離 約８３６３８ｋｍ 
アフリカ走行 １９９６／２／１〜１９９７／５／２８ 走行距離 約２２１０７ｋｍ 
マラウィ走行 １９９６／１２／〜１９９７／１／１３ 走行距離 約１０４２ｋｍ  |
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マラウィの入国はすんなりと終わった。入国カードに記入して、係官から入国スタンプを押してもらいそれでおしまい。白衣を着た係官がイエローカードの提示を求めてきたので、ロンドンで作ったものを提示して見せる。
マラウィ イエローカードを提示した。  「行って良し。」 無事、９３ケ国目のマラウィに入国を果たし、ほっと一息。国境で両替を済ませ、野菜などを買って小雨の中を走り始める。
マラウィ マラウィ通貨「クワッチャ」を手にして。  マラウィに入ると熱帯地を走行している気分だった。気持ち良いくらいに緑があり、どこの村にも水が豊富にある。マラウィ湖があるお陰なのだろう。貧乏そうにも見えるのだが、食に困っている様子はなく、平和そのものと言った感じだ。子供たちはタンザニアの子供に輪をかけたようにフレンドリー。入国してからと言うもの、何度となく疲れるほど子供たちの歓迎を受け、その都度手を振って答えた。 国境を過ぎてから２０ｋｍ余り。時刻も遅かったので、道から入った茂みの中でテントを張る事にした。誰も来ないと思ったのに、どこからか子供たちがやって来て、私の様子を伺い始めた。しばらくすると、子供たちはマンゴーを私に持ってきてくれた。親切な子供たちで、今まで出会った子供たちともまたどこか違った雰囲気だった。ブッシュキャンプに来た思わぬ来客が、マラウィと言う国の人柄を現していたように感じる。 翌朝１２月２３日。昨日の子供たちは再び私の所に顔を出してくれた。とても元気な子供たちで、 「一緒に記念写真を撮ろう。」 と私がカメラを構えると、空手のポーズをとってくれるのであった。
マラウィ 写真を撮ろうと言うと、空手のポーズをしてくれた。  せっかくなので３人で一緒に記念撮影をした。 「アチョー！」 ブルース・リーやジャッキー・チェンの映画を見た事があるのかもしれない。
マラウィ 私も一緒に「アチョー！」 出発しようとテントを畳んでいると、積極的な子供たちは手伝ってくれた。しっかりした少年たちに感謝。マラウィで話されていると言う覚えたてのチチェワ語で、 「ズィコモ」（ありがとう） と言って出発した。 グウィドとの待ち合わせ場所、カロンガの町のキャンプ場までは、わずかに３０ｋｍ程。となるとゆっくりだ。 「旅は道ずれだな。」 子供たちとのんびりしたので、走り出したのは９時頃だった。初めて見るマラウィの人々の様子を伺いながら走って行った。地元の人々は、やかましい位に私に挨拶をしてくれた。これだけ地元の人との挨拶が多いと、今度は疲れてしまう。 たまに小雨がふったりしたので、これが涼しくて良かった。マラウィ湖畔はまだ見えないようで、牧歌的な眺めが続く中を延々と走る。まるっきり平坦地だ。雨も止み、青空がのぞき始めた頃にマラウィ湖が見え出した。
マラウィ 畑の向こうに真っ青な湖が見えた。  午前１１時にはグウィドとの待ち合わせ予定のカロンガに到着した。一番大きなキャンピングロッジに投宿して、ウォーターフィルターを忘れたスイス男の到着を待つことにする。 マラウィ湖畔が目の前にあり、とても気持ちのよい美しいキャンプ場だった。敷地にはマンゴーの木がたくさんあり、南半球ではちょうど今が食べ頃。美しい芝生の緑に、真っ青なマラウィ湖。小鳥のさえずりも止むことがなく、 「あー、ここは楽園だ・・・。こんな静かでのんびりできる広い所が日本にはあっただろうか？」 ここのロッジは１泊約３００円。少しゆっくりした私は、シャワーを浴びて銀行へ直行した。昼飯でも自炊しようかと思っていた所にグウィドが到着。 「どうだった？あったの？」 「あったよ。」 無事手元に戻ったという。嬉しそうだった。 ロッジにはフランス人の旅行者も来ていた。彼とも情報交換を始める。アフリカの国々の良し悪しを聞いた。 「どうしてアフリカは…なんだ。どうして人々は…なんだ。」 グウィドが文句を言っている。 「我々だったらこうする。もっとこうするのに。彼らには向上心がないのか！」 など、先進国の人間からしてみれば、言いたいことはたくさんある。しかし全ての面で決して先進国の考え方や物の見方だけが正しいとは限らない。援助でも何でも彼らの立場に立ってアフリカ民の身になり、アフリカ民の目を持って物を考える事が大切なのだ・・・私は今までアフリカを走ってそんな事を感じていた。 翌日２４日はクリスマス。グウィドがこの日も走らないと言うので、またまた休息日となってしまった。海外で迎えるクリスマスも、これで５回目と言うことになる。別に悪くはないのだが、どうも野郎二人と言うのもしっくりこない。 「まあいいや。」 とりあえず晩飯と明日の食糧を買い込みクリスマスに備える。米を炊いて焼き飯を作り、ビールを飲んで…食事係はいつも私。たいした夕食ではなかったが、満月を見つつの語り合いも悪いものではなかった。キャンプ場でそんな風にのんびりとクリスマスを過ごした。
マラウィ 焼き飯を自炊する私。 
マラウィ まるでＣ３ＰＯのような剥げ頭のグウィド。 
マラウィ 男二人でクリスマス・・・ロマンチックな一夜とはほど遠い。  翌日１２月２５日。 「朝食はどこかの途中の道沿いで食べよう。」 そう言い合って、涼しいうちに距離を稼ぐことにした。以前より標高が下がっており、太陽の光がとても強く感じる。湖畔沿いのこの近辺もなかなか暑かった。
マラウィ 太陽がさんさんと照っており、暑い事この上ない。 
マラウィ 水汲み場で村人と。 
マラウィ 水汲み現場で写真を撮る。  強い太陽の光を浴びて、朝からぐったりしてしまった。１０時頃、ようやく適当な木陰を見つけ、ここで朝食。モグモグと食事をしていると、次々に子供たちが集まって来てしまった。 「今日はクリスマスだよ。何かないの？」 そう子供たちが言うと、グウィドはフロントバッグから何かを取り出した。それは緊急時に使う照明弾だった。 「パーン」 昼間でも眩しいくらいの照明弾が頭上に上がった。 「うおー、た〜まや〜。」 思わず日本語で言ってしまった。緊急の場合、象やライオンに出会ったときに使おうかと思っていたと言うその照明弾を、グウィドはクリスマスプレゼントとして子供たちに見せてあげたのだった。子供たちが興奮して喜んだことは言うまでもない。
マラウィ ここの木陰で朝食をとった。グウィドは照明弾を上げた。思わず「た〜まや〜」。  ぼこぼこのアスファルトを走っていると、この日はそこらじゅうで酔っ払いに出会った。年に一度のクリスマスのせいか。 「今日ばかりはなあ〜」 と言わんばかりに酔っ払い、皆陽気で道路をふらふらして歩いている。車の通りも、この日ばかりは本当に少ない。フラフラと泥酔している者がいても大丈夫そうだ。彼らはチブクと呼ばれる地酒を飲んでいた。私もこれを飲んでみる。なかなか癖のある酒だった。 昼は小さな村のレストランに入った。私は肉とライスを頼んだがクウィドはライスのみ。あとはジュースなどを飲んだ。
マラウィ 小さな村のレストランで肉とライスを頼んだ。暑い中なので食欲が今一つ・・・。  走行中は何度も酔っ払った村人が嬉しそうに寄ってきた。 「オーオー、メリークリスマス〜」 どこの村でも飲めや歌えやの大賑わい。この暑いクリスマスにヒーヒーと走っているのは我々くらいではないか。 二人とも喉が乾いたので、途中の商店でジュースを一杯。ここでは子供たちの餌食となり、いい見せ物となってしまった。ジュースを飲んでいただけなのに、いつの間にか４、５０人の人々がどこからか集まってきていた。そんな彼らの様子を写真に撮りながら交流した。それにしても皆フレンドリーで接していても飽きない。
マラウィ 休憩すると、いつの間にかこんなにも子供たちが集まってくる。 
マラウィ 元気のいい子供たちとグウィド。  途中の大きめの村で買い出しをした。ここもやはりお祭り騒ぎで、飲めや飲めやで大変。陽気にクリスマスを過ごすマラウィの人々の姿を見れたのは収穫だった。 この日は湖畔沿いの空き地にテントを張り、一夜を過ごすことにした。いつものように子供たちに囲まれながら夕刻を過ごす。スパゲティを作って夕食とした。
マラウィ この日湖畔沿いで野宿をする事になった。 
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