第２８７話 ８５カ国目 ガーナ 「魅力的なガーナ・・・。」  どうやら魚の燻製を作っているらしい。
アラスカ出発 １９９２／４／１〜ガーナ １９９６／７ ガーナ出国までの走行距離 約８７２７８ｋｍ 
アフリカ走行 １９９６／２／１〜１９９７／５／２８ 走行距離 約２２１０７ｋｍ 
ガーナ走行 １９９６／７／１４〜１９９６／７／２４ 走行距離 約５５３ｋｍ  |
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９時出発。ケープコーストの町中を抜け、メイン道路を走り出す。道路沿いではトウモロコシやバナナ他、色々な果物や野菜が売られていた。そんな路上の売り場で、葉っぱに包まれた１０センチ立方のトウモロコシを加工した風変わりな料理を発見したので早速購入。うまそうに見えて買ったが、結構単純な味で「美味い！」と言える物ではなかった。きっと何かもっと美味しい味付け方法があるのだろう。 ここにいた売り子のおばさん（お姉さん）たちはこれまたフレンドリー。笑顔で接してくれた。彼女たちの販売風景の写真を撮らせてもらう。
ガーナ 中央に置かれているのが彼らの主食。トウモロコシで作られたもの。  彼女たちにさようならを言って、その後しばらく走ると、今度は魚の燻製を作っている光景を目にした。道路からはかなり下にあったのだが、その珍しさに引かれ、土手をカメラ片手に駆け下りて、ちょっと見学していくことにした。おそらく海で捕れた魚を燻製にしていたのだと思うが、その焼き場の美しさは何とも言えないものだった。自然の土を利用したかまどと、魚の下に敷かれた竹のようなもので作られた網。その上に魚が縦横順に並べられ、とても見事な技法で作られている。自然を生かしたこうした暮らし振りを見ていると、本当にアフリカの人は自然と仲良くしているんだと実感する。 「なんて素晴らしいんだろう。」 感心して真剣に見ていると、地元の子供たちはクスクスと笑って私を見ていた。
ガーナ 「美しい」魚の燻製を作る作業。 
ガーナ 魚は縦横にきれいに配列されていた。 
ガーナ 自然と仲良く暮らす人々の姿に感動してしまう。 私が珍しそうに燻製作りを見ていると、おばさんが、 「はいよ。」 と一匹燻製をくれた。そんな「たかる」つもりでやって来た訳ではないのだが、遠慮せずに喜んでもらって食べた。なかなかうまい燻製だった。 こうした魚の燻製やトウモロコシで昼を済ませ、午後もえっちらおっちらとぺダルを踏んでいく。どのくらい走ったか、夕刻になり、首都アクラまでもう少し暗くなるまで無理して走り、今夜中に首都のアクラに着くのはちょっとしんどい。付近の村に安宿でもあれば、そこに泊まりたいと思った。ところがなかなか見付からない。 「今日はどうしようか。どこまで走るか。」 小さな村のはずれで立ち止まった時、１人の男が、 「どうしたんだ？」 と声を掛けてきたので、 「この村に宿はないですよね。」 と聞いた。すると、 「ん、ないね。アクラまで走ればあるが・・・今晩どうするんだね？」 と聞いてくれるので、 「どっかでテントを。」 そう言うと、 「それならうちの庭に来て張ればいいよ。」 この男性の名はイザックさん。海外青年協力隊の農業援助で日本人と仕事をした経験があると言い、とても日本びいきな方だったのである。彼の好意に甘え、庭にテントを張らせてもらう事になった。
ガーナ イザックさんの家の前でテントを張らせてもらう事にした。  イザックさんの子供たちはテントを見て嬉しそうにはしゃいだ。 「シャワーでも浴びなさい。」 そう言われ、家の外にあるシャワールームに案内を受けた。中にはいつものようにバケツ一杯の水が用意されているだけだった。もう何回もこうして洗っているので、最近これにはほとんど抵抗もなくなっている。走行中の汗水をこのバケツ１杯の水で洗い流し、さっぱり。イザックさんはジャイカ（国際協力事業団）の活動を本当に喜んでいた。特に協力隊の青年たちは一生懸命やってくれたと感心して話してくれた。協力隊の温かな志がそのまま私に跳ね返ってくるようで、単純に「旅」だけをしている私は恥ずかしい思いがした。こうした場面に遭遇すると、私も何かをしなければ・・・そんな気持ちにさせられてしまう。 小用を済ませにイザックさんの家の端の方に歩いていくと、ホタルがちらほら飛んでいた。 「きっときれいな水と空気がここにはあるのだろう。」 この晩は、のどかな気分でテント内で横になった。 翌日７月１８日。１泊テントを張らせてもらったイザックさんの家族の皆さんと一緒に記念写真を撮り、お礼を言って出発することにした。
ガーナ イザックさんとその家族と写真を撮った。 
ガーナ 全員家族かどうかは定かではないが、とにかくたくさんの子供たち。  イザックさん宅を後に３、４時間走ると首都アクラ郊外にやってきた。次第に交通量も増え、ゴチャゴチャしてきた。大きなビルもあり、活気のある街だ。私が街に来た時はそこらじゅうで工事をしていて走りにくかったが、無事に着けたのでほっと一安心。ガイドブックを頼りに安い宿に投宿することにした。
ガーナ 首都アクラに到着。 
ガーナ アクラの街で。風変わりな建物を眺めて。  宿に荷物を置き、その後すぐに隣国トーゴの通過ビザを取りに行く。簡単に１日で取得できた。その後、自転車のホイールの縦振れを完璧にとってもらうために自転車屋さんに出向く。何となく直ったが、やはり完璧ではなかった。その後は市内を飛脚号に乗って走った。スポークを買ったり、また、中国製のタイヤを購入したりして再び宿に戻る。どこを走ってもアクラの街には活気が漲っていた。 翌日７月１９日。自転車で西アフリカを走っているであろう友人宛てに手紙を置きに行こうと、日本大使館に出掛けた。係の人から何か情報が聞ければとも思った。領事の方はとても気さくな方で、ガーナの治安の良さがそのまま大使館員にまで反映されているような、のんびりとした感じの人だった。トーゴやナイジェリアの話も少し聞いておいた。この方とは、ＮＨＫのラジオジャパンの話題で盛り上がった。 「あのＮＨＫジャーナルのあとの私の歌日記のテーマソングを聞くと、眠くなっちゃうんですよ。」 こうした話が出来ると私もなぜか安心した。くだらない会話のようだが、世界各地で日本に思いを寄せながら聞いている人がいるんだと思うと、孤独感から少し解放されたような気持ちになった。 「アフリカで再会しよう！」 １９９２年１月にグアテマラで会った豪日サイクリストカップル、エミ＆スティーブに手紙を残そうと思っていたのだが、彼らは何と１０日程前に走り去ったと言う。 「ああ、あとちょっとの差か・・・擦れ違ってしまったか。」 インターネットやメールがあればこうした情報の遅延による擦れ違いは起きなかったのだが、手紙はやはり遅かった・・・。結局アフリカで彼らと会う事はなかった。再会できず実に残念。 この日は徹底的に飛脚号の整備に励んだ。各部の掃除に、ワイヤー等も交換したりした。こうすると今まで持ち歩いていた荷物も少しずつだが減っていく。 翌日の日曜日はゆっくりした。博物館はやっていたので出向いてみる。過去の奴隷貿易の歴史などがあるのかと思い覗いてみたが、悲しい歴史事は一切なく、石器や建築などの文化的な展示が大半だった。 ７月２日。世話になったホテルの人々と写真を撮って、首都のアクラを出発することにした。
ガーナ どこかユーモアのあるホテルの従業員。 
ガーナ ホテルの前で記念撮影。  アクラを後に目指すは隣国トーゴ。ひたすら湾岸沿いを東進する。ところが、アクラからテマと言う町に向けて海沿いを走ったつもりが、どこをどう走ったのか、変な工場地帯へと入ってしまった。標識もなくなり、すっかり迷子になった。あっちへ行きこっちへ行きの繰り返し。 「あれれ？どこだろう、ここは。」 スタンドを見つけ、そこで聞いてやっと東西を横断するメイン道路に出ることができた。 「ほっ」。
ガーナ 海岸線の道で。  ガーナで信じられなかった事は、車の運転だった。地元の人と接する限りは皆親切なのだが、ハンドルを握ると人が変わってしまうようで、なんてったって飛ばす。それにクラクションもピーピーと凄い。プラス道路上には無数の穴が空いている。アスファルトに穴が空いたまま修理せずにいるのだろう。これらの穴を避けながら、クラクションを、 「ピッピッピー」 と鳴らしてくれるので、ガーナの走行は意外にも最悪なものとなってしまった。 その後しばらく走ると、テマと言う町を通過。そこを過ぎて通った小さな村や集落には水道も店もない。ちょっと前まで大きな街、首都アクラにいたので、このギャップがとても不思議に感じてならなかった。田舎で見る人々は、本当に自然と共生している感じがする。朝方大きな街アクラにいたなんて信じられない。 穴ぼこをよけつつ走り、暗くなってからようやくアダジャンクションと言う町に到着。この町にはホテルがあったので、１０ドル払ってまともな所に投宿した。ここにはレストランもあり、コックはナイジェリアで稼いでホテルを建てたのだと言った。私が食べたメニューはチャーハンとチキン。ガーナは物価が安く人々は気さくだし、交通事情は今ひとつだが、旅行はし易い。あの時、英国女性の言った言葉はやはり本当だった。しかし私はメイン道路をさっと通過しただけだったので、欲を言えば、もっと内陸も走ってみたかった。 ７月２３日。夕食も朝食もレストランで済ませるなんて、久々にリッチな気分。ホテルの従業員は白い衣服をまとい爽やかな印象だ。そんな彼らと写真を撮って出発する。
ガーナ ホテルの前で出発前に記念写真。 
ガーナ 斜めになってしまったが、白衣の女性と記念写真。 
ガーナ 走り始めると広大なブッシュが周囲には広がっていた。  出発してから１５ｋｍほど走ると後輪のスポークが折れた。コートジボアールでハブを替えてからはどうも調子が悪いようで、完璧に直っていないようだ。 しょうがないのですぐ近くにあった店の庭を借りて修理させてもらった。自転車を引っくり返して派手に修理していると、通り掛かりの人たちが立ち寄り、様子を伺っていた。話し掛けてくれるので、私もスポークの修理をしながら今まで走った国の事を話した。修理が終ると皆で記念撮影を撮った。
ガーナ 村の人々と交流しながら修理。荷物を全部外して派手にやっていた。 
ガーナ とても親しみ易い人々がいた。  修理を終えた私は、その後も追い風に乗って国境の町へと走った。アフラオと言う町だ。この晩は、何を考えたのか、１泊１６ドルもする高い宿に泊まる事を決めてしまった。
ガーナ １泊１６ドルのホテルに。ガーナ人の月給の３分の１位の値段になるのだろうか。  これだけの大金を１泊に費やすと、部屋にはなんと湯舟があり、それにクーラーまで付いていた。もちろんお湯も出る。 「よーし、今夜は風呂だ。」 熱い湯船に体をプカプカさせると日本を思い出してしまう。私の故郷、諏訪は出湯の里・・・そんな事を考えると、生まれ育った所は贅沢な土地だと改めて思う。 風呂に久々に浸かり、ビールを飲んだ。 「ひゃー、んまいなあ。やっぱりガーナはいい国だ。」
ガーナ ホテルから町の風景を撮った。 
ガーナ 土地が広いので２階建ての住まいはまず見ない。  翌日７月２４日。ガーナ走行も最終日。この日はトーゴへ入国して、首都のローメ泊りだとのんびり。トーゴという国は１日走ると抜けてしまうような小国なのである。 「いったいどんな人々が住む国だろうか。」 そんな事を思いながら国境に向かった。アフラオの町からわずか３ｋｍ程走ると国境があった。
ガーナ ガーナとトーゴの国境間。  短かったガーナの走行もこれで終わり。治安は良く、人々も親切だったガーナ。やはりこの国のサイクリングはお勧めかもしれない。 国境で両替を済ませ、ガーナ側のイミグレーションで出国スタンプをもらった私は、トーゴヘと向かって行く事に。
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