第２８２話 ８３カ国目 ブルキナファソ 「ダビールさんに誘われて・・・。」  ブルキナファソには可愛らしいおもちゃのような家がある。
アラスカ出発 １９９２／４／１〜ブルキナファソ １９９６／６ ブルキナファソ出国までの走行距離 約８５８８７ｋｍ 
アフリカ走行 １９９６／２／１〜１９９７／５／２８ 走行距離 約２２１０７ｋｍ 
ブルキナファソ走行 １９９６／６／９〜１９９６／６／２１ 走行距離 約８２４ｋｍ  |
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ボボディラソに到着した翌日、暑さと疲労で午前中ダウン。結局町には２泊する事になった。この日の午後は疲れが残る体に鞭打って、マーケットや市内を見物した。民芸品売り場に出向くと、セネガルでも見た様な美しい木彫りの品々が並んでおり、端からお土産に買いたくなるものばかりだった。
ブルキナファソ 美しい民芸品の品々が所狭しと並んでいた。 
ブルキナファソ 動物や人の木彫りの人形が並んでいる。どれもとても美しいのだ。 
ブルキナファソ 仮面を着けて記念撮影。 
ブルキナファソ これが町の人々の胃袋「マルシェ」（マーケット）だ。 
ブルキナファソ 調味料や穀物などが並んでいる。 
ブルキナファソ マーケットの中を歩く人々。 
ブルキナファソ 市場を歩いているとフレンドリーな男に捕まった。 
ブルキナファソ 町にはモスクもあった。  この日も暑かったが、市場にいる人々はよく働いていた。私は暑いので歩くのがやっとだったのだが・・・。何か栄養をとって体力を保たねばと、一軒のレストランに入り、そこでスタミナ補給。洋風のまともなレストランだった。町での移動は自転車を使った。荷物が付いていない飛脚号だが、日中はバテた。休んでも休んでも暑さのせいだろうか、慢性的に疲れが溜まっているような感じがする。あまりに疲れが残るので、自分の体を疑ってしまう程だ。 午後３時、ブルキナファソ独特の家が飾られているという民族博物館を見学。しかしどうもピンと来ない。一般の村の方が面白いので、博物館は足早に見て終わり。 夜になって気温が下がり、ようやく元気が出てきた。昼にも出掛けたまともなレストランで、今度はスパゲッティを食べた。暑い１日が終わり元気が出た私は、 「よし、映画を見に行こう。」 と映画鑑賞をすることに。ブルキナファソには結構良い映画館があるのだそうだ。ここで米国の「インターネット」と言う映画を見た。フランス語の吹き替えだが、言葉は英語。日本語の字幕がなくてもちゃんと感動できた。凄く面白く、興奮して見てしまった。私が出発した頃はインターネットなんて言葉もほとんど聞かなかっただけに、最新の文明に触れたような気がした。 翌日６月１９日。ペダルを踏み出すが、朝から暑さでぐったり。だるさが体中に残っている感じがする。昨日は１日ゆっくりとしたはずなのに、まだ疲れは取れていないようだ。 町を後に走り出し、途中のピネという村でマーケットを目にした。また少し見学して行く。それほど田舎でもないと思ったが、地元の人々にはとても珍しがられた。マーケットを歩いていると、たくさんの美しいアクセサリーを付け着飾った少女がいた。 「おお、きれいだ・・・。」 写真に撮れなかったのが残念だった。
ブルキナファソ ピネの村でマーケットを見ていく事にした。 
ブルキナファソ ピネのマーケットで。 
ブルキナファソ ピネのマーケットで。  暑い中マーケットを見て歩き、その後も再び走った。赤色の土壁の藁葺き屋根の家は、本当にオモチャのようで見ていて飽きない。周囲にはたくさんの緑があり、暑いながらも、 「素晴らしい所に住んでいるんだなあ。」 そう感心した。
ブルキナファソ 可愛らしい家が道沿いからは見えていた。 その後、目的地の「トゥシアナ」と言う村目指し走って行った。
ブルキナファソ フィンランデと言う集落を通過。 
ブルキナファソ 道沿いから見る赤土の家と畑。 
ブルキナファソ きれいで可愛らしい家がそこには建っていた。  トゥシアナの村に着いたので、レストランに入った。ここで軽く食事をしてビールも飲んで、村の外れにでもテントを張ろう、そう考えていた。ご飯を食べ、 「今日の走行も無事に終ったなあ。」 そんな事を思いながらゆっくりしていると、地元の男が話しかけてきた。彼の名はダビールと言い、英語の先生をしているそうだ。英語とあってかコミュニケーションも上手くいき、私の旅について色々聞かれた。宿泊はいつも野宿でテントを張るのが大半と言い、 「今日も村の隅のどこかにテントを張って過ごそうと思っているんです。」 そう言うと、 「それなら私の家へ来ればいい。」 と誘ってくれる事になった。私は今までに見た、あの例の「おもちゃのような家」に泊まれて、彼らの生活を見学できると思った。ところが、数分して彼の家に着くと、がっちりとしたレンガで造られた家ではないか。ダビールさんはお金があるのか、立派な住まいに住んでいた。少しがっかり。
ブルキナファソ ダビールさん宅。  ダビールさんは独身で、弟と２人暮らしなのだそうだ。家の中に入れてもらうと、ちゃんとキッチンがあり、蛍光灯もあった。小さな村には電気がなかった所もあったから、それを考えるとやはりすごい。なんと部屋にはテレビもあり、更にびっくり。英語の先生はとても給料が良いのだろうか。そんな事を考えながら家の様子をキョロキョロと見ていると、ダビールさんのフィアンセの女性が、マイース（とうもろこしを加工して、プリンのようにした主食）の差し入れを持って来てくれた。とても美味しいといえる食事ではなかったが、ありがたく頂いた。 旅の話をして、寝る時間になった。私は、 「どうしても外で寝たい。」 と言うと、彼らは何だか申し訳なさそうに、 「そんなのはダメだ、中で眠れば良いよ。」 と言ってくれたが、夜は部屋の中は蒸し風呂のように暑くなるだろうし、蚊もやってくるはず。そういう最悪の状態はどうしても避けたい。家の中で眠るのに恐怖心を抱いていたので、 「私はテントが大好きなんです。外は涼しくていいですし。」 そう丁寧に言って、家の中での宿泊を断ってしまった。 翌朝、自分のテントで眠ったせいか、案の定良く眠れた。ダビールさんは私のために朝食を出してくれた。感謝。出発間際に彼と写真を撮り、礼を言ってまた走り始める事にした。
ブルキナファソ ダビールさん宅前で。中央がダビールさん。右は弟さん。  村を後にして、南西へと向かって走り始める。もうすぐコートジボアールの国境があるはずである。最近は比較的アップダウンが多くなった。周囲に緑も多く見えるようになり、かつての乾燥したサバンナとは一転した、美しい光景が目の前に広がっていた。はるか東方には樹海。気持ち良くどこまでも続いている。 「このまま南方に走れば海があるのか。」 内陸を長い間走って来ただけあって、「海」と言う言葉がとても新鮮に思えてくる。遠くに見える樹海を見ていたら、そこまで飛んで行きたい気分になってしまった。
ブルキナファソ 気持ち良くどこまでも樹海が続いていた。飛んで行きたい気分だ。 
ブルキナファソ 今日も黙々と走る。 
ブルキナファソ 途中では可愛らしい家々があった。 
ブルキナファソ コートジボアールの国境まであと１４３ｋｍ。 
ブルキナファソ 小さな集落では子供たちがバケツに水を入れて運んでいた。 
ブルキナファソ 水を運ぶアフリカの少女たち。  田舎ののどかな風景を見ながら走っていると、気持ちも和んだ。バンフォラと言う大きめの町に着き、ジュースを飲んで一息つき、その後も再び走り始める。今度はコトラと言う小さな村を通過。ここには小さな湖があり、湖畔では子供たちが楽しそうに泳いでいる。自然に囲まれて暮らす人々がどこか羨ましく思えた。
ブルキナファソ 小さな湖は子供たちの大きなプールだ。 
ブルキナファソ 伸び伸びと泳ぐ子供たちの姿が微笑ましい限り。 
ブルキナファソ 小さな村の湖で。 
ブルキナファソ 魚を獲る姿も。  コトラの村を過ぎ再び走り始めると、小さな集落で「カリテ」という種のような物を干した光景を目にした。地元の人に聞くと、 「これはフルーツだ。」 と言う。外側は緑色した甘いフルーツの実となっており、食べると栗のような味がした。この中にある種を１週間程日干しにすると油分が増し、中はまるでマヨネーズのようになって野菜と共に食べられるのだそうだ。これが噂の「一粒で二度美味しい」と言うカリテの実だ。日本人が米から酒やせんべいを作り出すように、アフリカに住む人々も自然の食物をうまく加工する「技術」を持っているのである。
ブルキナファソ カリテと言う実を日干しにしていた。 
ブルキナファソ 途中で見た愉快な形をした家々。  私は長くその土地に定住する訳ではないので、こうしたアフリカのナチュラルなフードプロセステクニックを知らないで通過してしまったりする。これはもったいない。食文化の探究も大喰い自転車野郎にとっては非常に大切な旅のテーマだ。かつての自転車世界一周の先輩は、この辺りから体力の衰えやマラリアにかかり、挫折や困難を強いられている。熱帯地域でたくましく生きる現地の人々の食生活を探る事、また、関心を持つ事は自分自身の食生活の管理や健康、体力維持にもつながるはずである。できる限り探究を深めていく事にしよう、「これからは食文化をもっと探求していかなければ・・・」ブルキナファソを走りながらそんな事を考えていた。
ブルキナファソ 途中にマンゴーの売り場があった。  約２週間続いたブルキナファソの走行もいよいよ最後、コートジボアールとの国境の町、ニアンゴロコにやって来た。さすが国境の町とあってか、すごい人々で賑わっていた。ここで３００円と言うおんぼろホテルを見付け投宿した。
ブルキナファソ ニアンゴロコのおんぼろホテル３００円に落ち着いた。  明日からはようやくコートジボアール。物価も高くなり、おいしい食事にもありつけるかもしれないと、気持ちが高揚してきた。新しい国への期待。これがあるから次の国、また次の国と懲りずに移動を繰り返す事ができるのだ。ガイドブックを見ると、１人当たりのＧＮＰはコートジボアールが７２０ドル。それに対しここブルキナファソは半分以下の３２０ドル。単純に考えて生活は２．２５倍豊かになるのかもしれない。私はそう思い込んだ。でも本当にどんな国なのだろうか。 翌日６月２１日。パンをかじり、いざ８４カ国目のコートジボアールを目指し出発。出入国するトラックが停まる駐車場で皆小用を済ますためか、近辺は鼻をつく小便臭さ。そんな小便臭い国境を越え、コートジボアールへと向かった。コートジボアールもセネガルやマリ、ブルキナファソと同じＣＦＡ通貨が使われているので、両替の必要はない。手間がなく楽な国境越えだ。これが中南米だと両替商人がハエのように沢山やって来るのだが・・・。
ブルキナファソ いざ８４カ国目のコートジボアールを目指し出発。 
ブルキナファソ 上と同じ写真なのだが・・・。  ８５８１２ｋｍ地点、８４カ国目のコートジボアールヘいよいよ入国だ。
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