第２７６話 ８２カ国目 マリ 「ジェンネのマーケット・・・。」  日中の気温は４０度以上。 パワフルなマーケットで圧倒された。
アラスカ出発 １９９２／４／１〜マリ １９９６／６ マリ出国までの走行距離 約８５０６３ｋｍ 
アフリカ走行 １９９６／２／１〜１９９７／５／２８ 走行距離 約２２１０７ｋｍ 
マリ走行 １９９６／５／２２〜１９９６／６／９ 走行距離 約１０３２ｋｍ  |
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６月３日月曜日。昨日ガイドの約束をしてくれた少年たちは、７時に待ち合わせ場所に来た。 「おはよう。今日の午前中はよろしくお願いね。」 少年たちにガイドをしてもらったのは他でもない。ジェンネの町中はまるで迷路のような造りになっており、こうした土地は地元の人の、それも子供たちに案内してもらうほうが楽しそうだと考えたからだ。 最初に彼らが連れて行ってくれた所は、ジェンネの町の民家の屋根の上。ここからはジェンネの町並みやモスクを見渡す事ができる。人々の家は全てが土造りのようで、屋根の部分には粘土質の土が使われ、側面の壁にはもみ殻を加えた土が使用されている。建築材料はすべて近くで取れる土を使った天然の素材。そう聞くと、彼らの住まいと言うのはとても合理的なものに見えてくる。
マリ 子供たちの案内で民家の屋根の上に登ってジェンネの街を見た。 
マリ とても土で出来ているとは思えない。珍しい住まいだ。 
マリ 屋根に溜まった雨水は再利用されるのだろう、一つの穴から落ちるように配慮されている。  屋根からジェンネの町を見た後は、狭い路地を少年たちの後について歩いた。コーランの勉強をする子供たちを横目に、鍛冶屋さんの家に連れて行かれたり、町長の家の案内も受けたりした。町の公共水道のある広場や民芸品販売店、いずれの店もすべて土で造られているのが印象的だった。
マリ 案内してくれたのは足の不自由な少年。彼はとにかく元気が良かった。 
マリ 狭い路地を歩いて行く。 
マリ 町の広場にある公共の水道。久々に水道を見たような気がする。  各家を見たが、中でも古びた木彫り彫刻の仮面が置いてあった家の部屋の中は、見応えがあった。昔を忍ばせる木彫りの仮面はどれも素晴らしい。代々伝わる家宝との事らしいが、今ではツーリストに売ったりしているそうだ。この「仮面コレクション」は圧巻だった。 朝方わずか２時間程の短い少年たちとのひと時ではあったが、少しでもジェンネの町を見ることが出来た。少年たちに感謝。それほど多額ではないが、ガイド料を払ってさようならを言う。
マリ 多くの仮面を見ていると何かに圧倒される感じだ。 
マリ 真っ暗な中だったので、少し不気味でもあった。 
マリ 早朝ガイドをしてくれた二人の少年。  ジェンネの月曜マーケットは午前１０時から始まると聞いたので、早速マーケットの開かれるモスクの前に向かう。ここには世界最大と言われる土壁で出来た珍しいモスクがある。このモスクの前の広場でジェンネのマーケットは開かれる。モスクを見るとその大きさにびっくりさせられてしまう。土壁と聞くと弱々しさを思い浮かべるが、そんな想像を越えた見事な建造物だった。 モスクを見ながら時間を待っていると、９時を回った頃からだろうか、広場にはポツリポツリと人が集まり始めた。
マリ とても大きな土壁のモスクの前の広場でマーケットは開催される。 
マリ 次第に多くの人々が集まるようになった。 
マリ マーケットの準備は着実に進んでいる。 
マリ たくさんの品々が持ち寄られている。  ジェンネのマーケットにはアラブ系の人々や、フラニー族と呼ばれる口の周囲を黒く塗っている部族、または時代劇にでも登場しそうな、つばの広い帽子をかぶった人々など、同じ国なのに、まるで異国を思わせる人々がマリの各地方から集まってくる。私はキャンプ場に戻り、急いで屋上に上がりジェンネのマーケットにやってくる人々の様子を眺めた。すると、遥か遠くからロバや牛車、自転車などを使って荷物を抱えた人々が次々にやって来るではないか。いったいどのくらい遠くから来るのだろうか。女性たちは大きな重そうなたらいを頭の上に載せて歩いている。どれだけ多くの人々が集まるのか楽しみだ。
マリ 遠くからやってくるたくさんの人々。 
マリ どのくらい遠くからやって来るのだろうか。 
マリ 馬車や徒歩、自転車の人もいる。  マーケットに戻ると、既に多くの人々が集まっていた。歩いていると、多国籍の人々が集まっている感覚だ。時間が経つに連れ気温は次第に上がり、３５度を越す酷暑の青空マーケットへと変わっていった。しかしそんな暑さなどはものともしない、信じられないくらいの活気がそこには漲っていた。
マリ 多国籍感覚で見る、活気あるこのジェンネのマーケットは壮観。
マリ マーケットにやって来た人々。 
マリ 色んな人々がどこからともなく集まってきた。  おばさん方が市場に持ち寄る品々は加工品が多い。見て歩くと、乾燥させたバオバブの葉、何かの野菜を日干にしたもの、各種の調味料や香辛料などが売られている。その他、珍しそうなものをちょっと断ってつまんだりする。 「これ何ですか？」 と聞くと、 「食べてみな。」 というので口に含むと、すごいにがい木の実だったりした。他にはなまずの干物に唐辛子、米にきびと言った穀物。遠くから運んで来るとあってか、やはり乾物が大半だ。水に戻せば使える物や加工品が目につく。マーケットでは他にも衣類や一般雑貨、そして薪も売られていた。更には自転車修理屋も登場。もちろんこの日の為の即席の修理屋さんだ。ギニア北部に始まり、マリでも人々は自転車をとてもよく利用する。穀物などの重い荷物を運ぶ為だろう。かつて見た事もないような、スポークの数が７１本もあるホイールを目にした。これには私もぶったまげた。これならば荷物の重さが１００キロ以上あっても壊れそうにない。乾季の為か、トラックで南から運ばれて来たマンゴーはとても人気がある。多くの人々がこのマンゴー売り場に集まっていた。安くておいしい庶民のフルーツ、マンゴーは西アフリカ諸国どの国へ行ってもポピュラーだ。市場では子供たちも親と一緒に働いている。気温はいつものように、真昼は４０度を越えていた。皆汗だくでやりとりしている。
マリ 可愛い少女も一緒に働いている。 
マリ マーケットの様子。 
マリ 酷暑の中だが活気が溢れていた。 
マリ マーケットにやって来た人々。 
マリ 色々な品々が売られている。 
マリ モスクの前で開かれていたジェンネのマーケット。 
マリ 写真の下に見えるのはホウキのようだ。 
マリ ものすごいマーケットの活気。 
マリ 彼らは江戸時代からやって来たのだろうか。風変わりな男たちの姿があった。 
マリ 商売に熱の入る女性陣。 
マリ ジェンネのマーケットで。  午前中はまだ余裕で見て歩けた私も、昼頃にはバテバテ。気温が高く、歩き疲れてしまいダラけてしまった。しかし彼らは威勢良く動き回っていた。 「アフリカの人々のパワーはすごい。」 正午をピークに、それから２時間ほどすると人々は早くも片付け始めた。遠い帰路を考えての事かもしれない。モスク前に広げられていたテントの数は次第に減っていく。そして午後４時。笑顔を浮かべつつどこかホッとした表情で、マーケットにやって来た人々はモスクを後に帰路について行った。 人々が集まり、物が集まる世界の素晴らしいマーケットをいくつも目にしてきたが、ここジェンネのマーケットには感動してしまった。特にこれと言う特別な品が並んでいる訳ではない。が、何か言い知れる魅力を感じた。 「素晴らしいマーケットを見る事ができた。」 酷暑の中を無理にここまで走ったのが報われたような思いだった。
マリ 人々はほっとした表情を浮かべ遠い岐路について行った。 
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