第２７２話　８１カ国目　ギニア

「ギニアで力強く生きる子どもたち・・・。」

木陰でぐったりして休んでいると、
子どもたちがマンゴーを持ってきてくれた。

アラスカ出発　１９９２／４／１～ギニア　１９９６／５
ギニア出国までの走行距離　約８４０３１ｋｍ

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アフリカ走行　１９９６／２／１～１９９７／５／２８
走行距離　約２２１０７ｋｍ

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ギニア走行　１９９６／５／５～１９９６／５／２２
走行距離　約１０２３ｋｍ

　ダボラを後に走り出すが、朝から暑く、午前中から温度計は３５度を指していた。汗もたらたらと流れ出てくる。とにかく暑い。以前走った高地のような爽快さはすでになくなっていた。平担な道が続いたのが何よりの救い。

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　ギニア　ダボラを後にして東へ進む。

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　ギニア　途中の小さな村には独特の家屋が建ち並んでいた。

　出発から２７ｋｍ走った所に小さな集落があったので、ここの屋台に寄り、地元のおばちゃんの作る料理を食べ、腹を満たした。
「おばちゃん、この飯うまいよ。」
そう言ってコッフェルに飯を詰めてもらうよう頼むと、彼女もどこか嬉しそうだった。標高が下がった分、気候も暑くなったのだろう。村の人々が活発に動き回る光景は少なくなったように思う。日中こうも暑くなると私の体力の消耗も激しかった。同じ国内でもここまで気候に差があるとかなりきついものがある。平坦な道を走っていたにもかかわらずバテてしまった。
　小さな村を走って行くが、途中では子供たちの水汲み風景をよく目にした。２０リットルのプラスチックタンクに水を満杯にして頭の上に載せ運んで行く。地下水を汲み上げるポンプの運動だけでも酷暑の中では大変なのだが、子どもたちの元気さはいったいどこからくるのか。いつも感心させられてしまう。この時寄った井戸では幼稚園児くらいの小さな女の子が、手際良く、勢い良くパッパと洗濯をしていた。その慣れた手つきにただ感心して見入っているだけだった。
　この日も涼しそうな森の中にテントを張って自炊した。

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　ギニア　この日は涼しそうな森の中にテントを張って過ごした。

　翌日５月１７日。森の中の寝心地は良かった。一日中太陽の当たっていた所と、そうでない所では土の表面温度が違い、キャンプする場合は緑の草木の多い日陰で野宿するように心がけた。そうでないとその夜は、いつまでも暑い地面の上で眠れぬ夜を過ごしてしまう事になる。
　この日の日中の最高気温は３５度程。いつもと比べればそれほどの暑さではなかった。木陰で食事をし、少し休んでいるとトラックに乗った地元の男が停まり、心配して車から降りてきてくれた。
「どうした？大丈夫かい？」
「ええ、大丈夫です。」
「わしゃ、パンクかと思ったよ。」
賄賂をせしめてやろうと言う警官もいれば、彼のような優しい男もいる。同じギニア人でも違うものだなあ・・・そう思う。彼には、クルサからシギリまでの道路情報を色々と聞いておいた。あの道はマリの首都バマコへ向かうための近道。田舎道で道路状況も悪そうだが、自転車で走れるなら行って見たいと思っていたのだ。
「あそこにはたくさんの村もあれば、水も豊富だし、まず問題はないだろう。」
そう言ってくれた。私はそのクルサからシギリ区間を走ってバマコへ向かう事に決めた。

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　ギニア　未舗装のギニアの道。この時ちょうど工事中だったようでアスファルトのように走り易い状態となっていた。

　ようやくクルサの町に到着し安宿を見つけ、そこに投宿した。が、部屋には扇風機もなく、電気もおそらく夜中に切れてしまうだろうからと、庭にテントを張らせてもらう事にした。水だけ使わせてもらえばそれで助かると思った。夜になると主人が、
「ご飯を一緒に食べないかい？」
と誘ってくれた。薄暗い電灯の灯る庭先で主人と夕食。小さなボールのような容器に右手で直接ご飯をとって食べる。彼らは猫舌なのか、それほど暑くないご飯を「フーフー」と冷ましながら食べていたのがとても印象的だった。食事を済ませ、さあ寝ようかなと思っていると、主人はビールを売っている所がある、と教えてくれた。暑い中を走って来て、ビールが飲めるのならそれは嬉しい、と早速連れて行ってもらった。ギニアはイスラム教が多く、禁酒のはずだと思っていたが、見ていれば酒を飲む人はちゃんと飲むようである。こうした風景を見ると、なぜか私も安心してしまう。
　翌朝５月１８日、親切な管理人にありがとうを告げて写真を撮り、宿を後にした。

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　ギニア　クルサで泊まった宿の庭で。

　クルサからマリ国境へ向かう為の道は舗装路でなく、ダート道。走り出すと以前モーリタニアのときに走ったような砂道が始まり、苦闘を強いられた。

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　ギニア　クルサからシギリへ向かう途中の道で。悪路が始まった。

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　ギニア　クルサからシギリへ向かう途中の道。

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　ギニア　こちらはメインの道、砂が多く走りにくい。

　ところがしばらく走ると、メイン道路とは別の林の中を地元の男たちが自転車で颯爽と走って行く姿を目にした。
「あれ？」
どうやら自転車専用道があるらしい。私も早速その「自転車道」を走って行く事にした。

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　ギニア　メインの幹線道路は砂が深かったので、地元の人々が使う「自転車道」を私も走って行った。

　しかし自転車道と言ってもボコボコで、私のように重い荷物を付けて走るとなるとかなり酷であった。時々木陰で休んでは少しずつ走って行った。
　日中の一番暑い時刻を迎え、もうろうとして木陰で休んでいた。するとそこにボロボロの服を着た少年たちがやって来て、じっと私の様子を伺い始めた。彼らに挨拶もせず、私はそのままじっと木陰で座っていた。きっと何かくれと物乞いをするのだろう、くらいにしか思っていなかったのである。ところがしばらくすると、少年たちはどこからかマンゴーを持って来てくれ、私に差し出してくれた。
「あ、ありがとう。」
たかがマンゴーと言ってしまえばそれまでだが、このとき木陰でバテていた私にはとても嬉しい差し入れだった。たまらなく嬉しくなり、その場で頂いた。「物乞いだ」と決め付けて子どもたちに接した自分が恥ずかしかった。少年たちは無言でマンゴーをくれ、頑張れと言ってくれたのだ。私は嬉しくなりクラブのステッカーを渡した。ボロボロの服装で汗だくになりながら力強く生きる、優しい子どもたち・・・そんな彼らの優しさはいったいどこからくるのだろうか。ギニアの子どもたちには本当に頭が上がらない。

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　ギニア　木陰で休んでいると、マンゴーを持って来てくれた子どもたち。