第２６９話 ８１カ国目 ギニア 「地図無しで走るギニア・・・。」  「子どもの写真を撮ってちょうだい。」 彼女たちは何を伝えたかったのか。
アラスカ出発 １９９２／４／１〜ギニア １９９６／５ ギニア出国までの走行距離 約８４０３１ｋｍ 
アフリカ走行 １９９６／２／１〜１９９７／５／２８ 走行距離 約２２１０７ｋｍ 
ギニア走行 １９９６／５／５〜１９９６／５／２２ 走行距離 約１０２３ｋｍ  |
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翌日５月７日。目を覚まし、外を見ると曇り空。 「良かったー、今日は涼しそうだ。」 曇りの日は気温も低くなる、それを思うとすこぶる元気が出てくる。いつものように赤い「洗濯板道」を走っていると、前方に前輪シャフトが折れてしまったような日本製ＲＶ車が停まっていた。中古でこのアフリカのギニアに送られて来たのかは知らないが、日本製ＲＶをも走れなくしてしまう凄い道と言うのがここにはあるのだ。 「こんな道ばかりを走っていたら、飛脚号は何台あっても足りそうにないな。」 モーリタニアでも苦闘した、波のように続く未舗装路はここギニアの田舎にもあった。
ギニア 日本製ＲＶ車もこの通り・・・。 
ギニア とにかく尻が痛い・・・。  以前走り抜けて来た道とはまた違った風景が見え始めていた。土は以前にも増して赤くなり、次第にアップダウンが始まった。そんなボコボコの坂道をゆっくりとペダルを踏んで進んで行った。
ギニア 砂混じりの赤土。  しばらく走ると前方に村が見えた。 「やっと村か。」
ギニア 前方にきれいな村を発見した。  ガンビア国境で西アフリカの地図を失っているので、ギニア地図と言えばガイドブック付属の１０センチ四方のものくらいしか手元になかった。これは１センチが約１００ｋｍ、つまり１千万分の１という縮小の大雑把な地図で、本当に大きな町しか記載されていなかった。この地図を拡大コピーして持ち歩いており、小さな村の位置や情報は口と耳で地元の人に尋ねなければならなかった。
ギニア ガイドブックの小さな地図を拡大コピー。これを見ながらギニアを走った。  小さな村は当然地図には記載されていないので、着く度に地元の人を捕まえて、「次の村情報」をフランス語で聞き出す必要があった。嫌でも聞いておかないと、ご飯が食べれないとか、水の補給が出来ないなど、大変な目に遭ってしまう。最低でも次の村まで何ｋｍか、それと水の有無がどうなのかを聞く事にしていた。地図が無かったお陰で私も必要最低限のフランス語の単語を覚える事ができたように思う。
ギニア 小さな村があると必ず、次の村まで情報や距離などを聞いた。 
ギニア 小さな田舎の美しい村を通過して。  小さな村にもちゃんと食堂はあった。多くのトラックや車も立ち寄るそうで、このとき村には美味そうな鳥飯屋の屋台があった。鳥飯と言っても、白いご飯に鳥肉の煮込み汁をかけて小さな肉をちょこっとのせるだけの、いわゆる「ぶっかけご飯」なのだが、これがとても美味しい。ギニア女性の心のこもった料理。ギニアでの「お袋の味」とでも言えば良いのだろうか。とにかく美味しかったので、食べたあとに写真を撮らせてもらい、更にコッフェルにも詰めてもらい、走行中に頂く事にした。
ギニア 右が白いご飯。冷めないように白い布がかぶせられていた。左は鶏肉と肉汁。ギニアのお袋の味。単純なぶっかけご飯だが、とても美味しい。 
ギニア 村では元気で陽気な子どもたちにも出会った。 
ギニア 店の前で子どもたちと。  村を出た後も波のような赤い砂道は続いた。ガタガタガタとサドルから振動が伝わって来て、尻も痛くなり始めていた。早い時間に昼飯を食べてしまったので、午後の３時にはまたエネルギー補給。コッフェルに詰めてもらった鳥飯を食べる。冷めてしまっているが、それでも「ギニアのお袋の味」はたまらなくうまかった。車の通りが少ないせいだろうか、飯を食べていると、どこからかガザガザと音がなる。何かと思ったら猿の群れだ。
ギニア 休憩していると猿の群れに出会った。（中央に小さくいる。） 
ギニア 森の中の道を駆け抜けて走って行く。 
ギニア ジャングルを歩く人々。 
ギニア アップダウンの多いギニアの赤い道。 
ギニア 途中の橋で。 
ギニア 橋の上で記念撮影。橋も茶色い。  しばらく走るとコンシテルと言う村に到着した。ここは首都コナクリへ続く交通の大きな分岐点でもあるようで、レストランや商店が多く建ち並び、集落には人々の活気がみなぎっていた。商店やレストランと言っても掘っ立て小屋がズラリ並んでいるだけなのだが、田舎のジャングルを走って来たせいもあり、このときの私にはとても大きな町のように見えた。建ち並ぶ各店には屋根付きの小さなベンチがあり、ゆっくりできるようになっていた。
ギニア ここは首都コナクリに続く大きな交通の分岐点だ。 
ギニア 茅葺のような造りの店が建ち並んでいた。 
ギニア コンシテルの村の人々。 
ギニア コンシテルのレストラン街・・・。 
ギニア 小さな店が建ち並んでいた。  荷物満載のトラックやライトバンのルーフに荷を山積みした車が行き交う、交通の要所であるこのコンシテルの村で、私は一泊していく事にした。ホテルのような宿は何もなさそうだったので、ジャンダルメリ（警察のようなもの）の裏庭にテントを張らせてもらうことにした。
ギニア ジャンダルメリの横にテントを張らせてもらった。  夕食は近くのレストランでご飯と牛肉。先日食べたぶっかけご飯だ。ところがこのレストランでは肉汁はたくさんかけてくれるが、肝心の肉と言えば２センチ角ほどのちっちゃなのがポツリポツリと二つのっているだけ。 「これは寂しいな・・・」 とにかく腹持ちの良い白い飯をたくさん食べた。ギニアもイスラムの国だが、なぜかアルコールは売っていた。ジャンダルメリの横でもビールが公然と売られており、私は嬉しくなってしまい、ギニアビサウに引き続きビールを飲んだ。なまぬるいビールだったのが残念。 ここの警官は危ない様子はなかった。しかし周囲が暗くなると、地元の車をピピっと停めては金を受け取っていた。賄賂か何かは確実ではないが、困った様子の運転手の顔を見ればそうであることは予測出来た。 「それは高い、のどうのこうの・・・」 懐中電灯を片手に札束を数える怪しい警官の姿がそこには存在していた。この夜は寝苦しく、ジャンダルメリの横では夜中に何度も乗用車やトラックが往来しては停まり、ボソボソやっていたので熟睡できなかった。やはり野宿は大自然の中に限る。 翌朝、近くの屋台でカフェオレを注文。カフェオレだけ注文したら固いフランスパンも一緒についてきた。そのうえ勝手にパンの間にべっとりマヨネーズを塗ってくれてあった。朝からカフェオレ＆マヨパン。マヨネーズは嫌いではないのでマヨパンも悪くはないが、いきなり目の前にこういう品を出されるとカルチャーショックを受けてしまう。西アフリカの多くの国では、「カフェオレ」と言うとパンか何かを一緒に出してくれる所が多かった気がする。 出発前に警官や地元の人々に『次の村情報』を聞いておく。この先はかなりアップダウンが多いそうだ。出発は９時。走り出してしばらくすると、また野性の猿たちが横切っていった。
ギニア 道路を横切って行く猿たち。  今まで走って来た地とは一転。凄い急勾配のアップダウンが始まっていった。周囲の風景は赤土と緑。熱帯ジャングルの気分である。
ギニア 標高が上がっていくと、眼下にはジャングルが広がっていた。 
ギニア ジャングルを眺めながら坂道を走っていった。 
ギニア 洗濯板のような道はまだ続いていた。 
ギニア 山間部を駆け抜けて。  アップダウンをゆっくり走っていると、肌をチクチクと刺すハエ（おそらくツェツェバエ）がやってきて、私の太腿の辺りをチクチクと容赦なくやってくれるのでたまらない。しばらくは走りながらパンパンと叩いたりしていたのだが、埒があかない。ロンドンで買った強力な虫よけを塗ると、近ずいて肌に止まっても刺さないことが分かった。 波のようなダート道は相変わらず続いていた。しかし救いは曇り空。温度計を見れば３０度を割っている。今まで酷暑の西アフリカを走って来た自分にとっては信じられない思いだった。少し蒸してる気もするが、涼しいのは本当に助かる。コンシテルから走ること４５ｋｍ。バンダラと言う村に着いたのは午後３時過ぎ。ここで食事。魚のフライの切れっはじがちょこっとのった小さなその飯が５０円。もう少し具があればと思うが、こんな山奥ではそう贅沢を言えそうもない。ここでも白い飯をコッフェルに詰めてもらった。コッフェルいっぱいに詰めてもらって１０００ギニアフラン（約１１０円）だった。村から川を渡り更に東へ。途中の小さな村では地元の女性に写真を撮れとせがまれる。子どもの具合が悪いのか、「この子の写真を撮って誰かに見せて、そして助けてあげて欲しい。」そう訴えているように感じた。ぐったりした子どもたちを大切に抱きかかえる女性の姿。彼女たちは何を伝えたかったのか・・・。
ギニア 「子どもの写真を撮って！」そう懇願してきた女性。
ギニア なぜ写真を撮って欲しいと言ったのか。  ギニアビサウに入ってからは、おへそに何かしこりができたような子供を数多く見るようになった。消毒しないままナイフなどで臍の緒を切ると良くないと聞いたことがあるが、その後遺症だろうか。こうした子供たちの「出べそ」は西アフリカの至る所で目にした。この日の夕刻、久々に雨に降られた。モロッコのアトラス越え以来だろうか。気持ち良い雨に打たれながらテントを張って眠りに着いた。
ギニア 久々にこの日は雨に降られた。気持ちの良い天の恵みだ。 
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