第１９４話 ６０カ国目 フランス 「パリ到着・・・。」  凱旋門からみた眺め。道は放射線状に伸びている。
アラスカ出発 １９９２／４／１〜フランス １９９５／１１ フランス出国までの走行距離 約７５３２６ｋｍ 
欧州・中東走行 １９９４／６／２９〜１９９６／２／１ 走行距離 約３４１３１ｋｍ 
フランス走行 １９９４／１０／１８〜１９９４／１０／２０ 及び １９９５／４／２４〜１９９５／５／２６ １９９５／１１／１６〜１９９５／１１／２７ 走行距離 約２１５４ｋｍ  |
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モンタルジのキャンプ場では毎日フランスパンにかじりついていた。誰に盗られる訳でもないのに、何故か焦って食べてしまったので、何回か口のまわりを切ってしまった。やはりフランスパンは行儀よく、ちぎって食べる物なのだろう。 花の都パリを目指し出発したのは５月１４日。パリ郊外にやって来ても、まだ農場地は広がっている。フランスの穀物自給率は２００％を越えると言われているが、こんな風景を見ると納得できる。 「♪おーシャンゼリゼー・・・」 と歌いながら、ようやくパリ郊外にやってきた。手元の大きなパリの市街地図を広げ、都会入りの準備を行った。右も左も分からないパリ。この大都会で目指すのは、安く泊まることの出来るブローニュの森キャンプ場。そこまで何とか辿り着かなくてはならない。とにかくパリの中心地へと進んで行く。しばらく走ると大きな川にぶち当たった。 「これがセーヌ川・・・」 あの有名なセーヌ川が目の前を流れていると言うのも信じられないが、この川を目印に走って行けば、キャンプ場の場所も分かりそうだ。
フランス 「ここがパリなのか・・・」本当にパリにやって来た。  セーヌ川は見つけたが、どうも自分の現在地が詳しく把握できず、地図と道を照らし合わせては、 「あっちかな？こっちかな？」 と走り、何時間かが過ぎてしまった。街ですれ違った人々に尋ねながら、ようやくブローニュの森のキャンプ場に到着。 「やれやれ。」 １泊の宿泊料は、以前に友人から聞いていた通り６３フラン。約１３００円。野宿を繰り返してきた私にとっては高い事この上ない。でも温かいシャワーに自炊場、ランドリーなどもあるので、リフレッシュできそうなのは何より。 パリの街では観光に、スライドの現像などもしたい。フランス料理を食べてみたいが都会で食べると高くつきそうだ。という事で、毎日ほとんどキャンプ場での自炊が続いた。ある夜、テントの中心でローソクを立てていたのだが、ふっと後ろを振り向いた瞬間に、ローソクが倒れてしまった。「あっ」という間にテントの底の部分、１０ｃｍ四方が溶けてしまった。これで雨の日は水が漏ってしまう・・・悲しい。
フランス 多くの旅行者がここに宿泊していた。パリの郊外にあるブローニュの森キャンプ場。こんな所でも１泊１３００円もする。  パリ滞在中は日本語の新聞が手に入ったので、毎日買っては読み耽っていた。１部３００円もしたが、それでも安いと感じた。日本の新聞を買うのも、都会だからこそできる贅沢。走り出せば、友人からの手紙と耳で聞く短波ラジオだけが旅の情報になる。 新聞にはアフリカ情報なども色々と書かれていた。当時は、コンゴで発生したエボラ出血熱の記事が取り上げられていた。致死率が９０％、空気感染はしない、まだワクチンは出来ていない・・・。そんな記事を読むとアフリカ行きも少し恐くなってくる。 「あの辺は避けた方がいいかもしれない・・・。」 アフリカ縦断する人々の多くはミシュランのアフリカ地図を使う。これはフランス製。パリで買うのが安いのではないかと思い、私は一番新しい英語版のアフリカ地図を購入した。 キャンプ場で地図を見ながら、これから走るルートを考え始めると、何時間でも飽きずに見入ってしまうのである。 「んー。これからどう走るか・・・ここフランスからはイギリスに向かい、スコットランドからアイルランドだな。アイルランドから再びイギリスに戻って、その後フランスを経由して、スペインからポルトガル、そしてアフリカの順か。やはりアフリカは西アフリカから南下すべきだろう。」 そうルートを練っていた。しかし、このままアフリカ大陸への南下を決行すると、西アフリカに突入するのが、ちょうど真夏になってしまいそう・・・。 「真夏にサハラを南下するのはまずい。となるとどう走ればいいのか。」 ここで考えたのはサイドトリップ。当初の予定ではアフリカを走った後に中東を走るつもりでいた。が、アフリカへ行く前に空路を使って、中東諸国を走ってしまおうと考えた。 「中東も暑そうだが、真夏の西サハラよりはずっと楽かもしれない。」 正確なルートは決まっていないが、西サハラに入るのはできれば冬が良いだろうと考えた。 地図を購入し、ルートを考え、フィルムの現像をしたり、新しくコードレスのサイクルメーターを購入したりと雑用を済ませた。そしてせっかくなのでパリ観光も。エッフェル塔に登り、パリを一望。セーヌ川の流れはどこまでもくねくねと続いていた。
フランス エッフェル塔に上るとパリが一望できた。 
フランス エッフェル塔から下を見下ろした。 
フランス エッフェル塔。高さ３００ｍ。１８８９年の万博の時に建てられたそうだ。 
フランス エッフェル塔。 
フランス エッフェル塔近辺からの眺め。 
フランス エッフェル塔から見下ろす眺め。  エッフェル塔を後に、今度はルーブル美術館に向かう。その大きな美術館には度肝を抜かされた。館内にはミロのビーナスや、レオナルド・ダ・ビンチのモナリザもある。 「こ、これが、学校の教科書にも出てきた本物なのか・・・。」 芸術的センスのない私はそんな風にしか感じ取ってしまう。しかし次々に目の前に現れる絵画を見て歩いていると、どこか優雅な気持ちになれた。ルーブル美術館をゆっくりと見て歩けば、とてもではないが１日では終わらない。とにかく大きな美術館。
フランス ルーブル美術館で。  欧州の美術館を見て周り、芸術センスを磨くのも良いかもしれないが、私は大自然の中で野宿などをして、野性的な感性を磨く方が性に合っているような気がした。 ルーブル美術館を見学したので、今度は凱旋門へ。
フランス 「あそこが凱旋門・・・」 
フランス あの門の上に登れるようになっている。高さは５０ｍ。 
フランス シャンゼリゼ通り。その延長上にはグランド・アルシェ（大アーチ）が見える。 
フランス エッフェル塔の姿も。 
フランス 道はきれいに放射線状に伸びていた。 ５月２５日。パリの観光を済ませ、現像もして、手記も日本に送り終えたので、ブローニュの森キャンプ場を後に、いよいよイギリスを目指すべく出発した。目指すはドーバー海峡に面した町、ディエップ。 「いよいよイギリスか。」 たくさんの英国人にも出会ってきたので、いったいどんな国なのかとても楽しみだ。 パリ郊外を抜け何ｋｍか走ると、再び広い農場地が広がっていた。フランスの土壌は見るからに肥沃。植えれば何でも育ってしまいそうだ。 途中寄った小さな街ジゾールでは、青空マーケットが開かれており、地元の人々が色々な品を持ち寄って売っていた。古そうなレコードに服、古本、更に中古車までありびっくり。
フランス 「何でもあります。買ってくださいよー。」 
フランス まるで新品のような中古車。これも売り物だそうな。  この日はグルネイヤンブーの町で買い物。牧場の間でテントを張らせてもらい、野宿を決行した。
フランス グルネイヤンブーを過ぎた牧場の横でテントを張った。  翌日５月２６日。野宿地から走り始めると、まるで北海道のような広大な土地が広がっていた。原発にＴＧＶ（超高速列車）やコンコルド、ルノーの車など、工業的なイメージが先行していた。でもフランスは農業大国でもある。自然豊かなフランスと言う国に、どこか魅力を感じる。昼過ぎにはドーバー海峡に面した港町ディエップに到着。
フランス ディエップの町にやって来た。  目の前にはドーバー海峡が見えた。フェリー出航の時刻までにはまだ時間があったので、ディエップの町を少し走り、スーパーに寄って買い物をする。港では中年サイクリストたちに出会った。
フランス フェリー乗り場で出会ったサイクリストたち。 
フランス とても風変わりな地形がそこに。 
フランス 目の前に広がっているのは、ドーバー海峡・・・。  夕方の午後５時、フェリーに乗り込み、フランスを出国。 「いよいよ６１カ国目のイギリスだ。」 英国の入国はかなり厳しいと聞いているので、少し不安。 「一応キャッシュは多めに持っている。出国のチケットはないけど、カードもあるし、きっと大丈夫だろう。」 問題なく入国できれば良いのだが・・・。
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