第１８４話 ５８カ国目 チュニジア 「アフリカへの思いを胸に・・・。」  「アッカンベー」をするチュニジアの田舎の子供たち。 元気な子供たちを見るとなぜか嬉しいもの。
アラスカ出発 １９９２／４／１〜チュニジア １９９５／４ チュニジア出国までの走行距離 約６３３７７ｋｍ 
欧州・中東走行 １９９４／６／２９〜１９９６／２／１ 走行距離 約３４１３１ｋｍ 
チュニジア走行 １９９５／４／３〜１９９４／４／１１ 走行距離 約６７０ｋｍ  |
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テントの外は暴風。どうやら今日も天気は良くないのかもしれない。よく見ると空中にとても細かい、まるで粉のような砂が舞っている。カメラをビニール袋にでも入れないと、砂が入り込んできそう。
チュニジア テントを張った場所で。細かな砂が舞っていた。  テントを畳んで出発すると、ものすごい北風が吹いていた。 「今日は追い風だ。」 この風を受けて走ると、あっという間に時速３０ｋｍくらいになった。快適この上ない。周囲の風景にはますます緑が少なくなった。しかし、あのサハラ砂漠をイメージさせるような黄金の砂丘などはどこにも無く、薄いベージュの砂地がどこまでも広がっているだけである。 何時間か走ると、ガフサという大き目の町にやって来た。周囲にはユーカリの木やヤシ、ソテツのような青々とした木々があり、まるでオアシスのようにも見える。
チュニジア 荒地でも良く育つと言われるユーカリの木々。 
チュニジア これはおそらく「ガフサにようこそ」と書いてあるのだと思う・・・。  ガフサの町の中に入っていくと、活気に満ちた人々の姿が目に入ってきた。このガフサの町を通過しながら少し見て歩き、更に南西のトゥゼール方面へとペダルを踏んだ。
チュニジア ガフサ街の入り口で。 
チュニジア ガフサの街で出会った少年。  町を抜けると再び視界は開け、砂地の中の１本道と言う感じになった。雲があるからまだ良いが、たまに直射日光が肌に当たると、びっくりするくらい強く感じる。夏の暑さを想像すると、恐ろしい。建物の下や日陰に入ると、その暑さも苦にはならなかった。
チュニジア かなり南にやって来たので、砂地が多くなってきた。 
チュニジア 途中寄ったお店でのワンショット。 
チュニジア 崩壊した家。 
チュニジア 街外れの砂地になぜかニワトリの姿が。 
チュニジア まだまだ南へ。 
チュニジア これはアラビア文字の「コカコーラ」の看板。 
チュニジア 南へと続く黒いアスファルト。 
チュニジア こんな元気な子供たちに出会うと嬉しい。これはチュニジアの子供の「アッカンベー」。 砂地の中に敷かれたアスファルトを走っていると、遠くにラクダの姿が見えた。途中にあった小さな町で食料の買出しを行い、更に南に向けて走っていると、 「ピッピッピッピー」 と、二人乗りのバイク。 「あ、また彼らかな？」 以前に出会ったドイツ人のカップルのバイクツーリストだった。 「今夜はどこに泊まるんだい？」 と聞いて来るので、 「そこかでテントを張ろうと思ってる。」 と言うと、 「デガッシェにキャンプ場があるみたいよ。私たちも知らなかったけど。ここからすぐよ。良かったら行ってみたら？」 そう勧められたので、たまには快適なシャワーを浴びようと思い、デガッシュに向かうことにした。 キャンプ場に着き、料金を聞くと、１泊２５０円ほど。おそらくドイツ人だと思うが、それはたくさんのバイクに乗ったツーリストがテントを張っていた。この日は気持ちの良いシャワーを浴びて横になる。
チュニジア デガッシェのキャンプ場で。 
チュニジア デガッシェのキャンプ場。  １週間の予定で走って来たチュニジア走行も終盤線。明後日の月曜日にはチュニスに戻らなければならない。短い期間であればあるほど、もっとこの国を長く走っていたいと言う思いにかられる。このデガッシェのキャンプ場から更に南西へとペダルを踏んだ。
チュニジア 田舎町の子供たち。 
チュニジア ようやくトゥゼールにとやって来た。  ようやくトゥゼールに到着。日本人観光客もここには多くやってくるのか、 「コンニチワ」 と巧みな日本語で声を掛けてくる人がいる。 ここが一応のチュニジア走行終着地。
チュニジア トゥゼールは観光地だ。 
チュニジア トゥゼールの街で。美しい民芸品が並んでいる。 
チュニジア トゥゼールの街の路地に入ってみた。  ここトゥゼールからチュニスに向かうバスがあるので、これに自転車も積んで戻ることになる。チュニス行きのバスは日曜日発。となればもう少し走れることになる。私はトゥゼールから更に南西に向けてペダルを踏み、ナフタへと向かった。といってもわずか２３ｋｍほどだが。 「もっと走りたい。このままアフリカを縦断してしまいたい・・・。」 そんな気持ちで、私は走れる所まで走った。 トゥゼールから何ｋｍ走っただろうか。後方から聞き覚えのあるクラクションが鳴った。 「ピッピッピー。」 振り向けば、また例のドイツ人カップルバイクツーリストだ。 「やあ、再びこんにちは。どう？その後は？良かったらナフタのどこかでコーヒーでも飲まない。」 「えっと１５分後くらいには着くと思うから。」 そう言ってナフタで彼らと合流してコーヒーを飲んだ。このときに話題となったのは、やはりチュニジアの子供たちについてだった。彼らも、そして彼らの友人も、やはり石を投げられ、また物を盗られたそうである。皆同じような事をされているので安心してしまう。わずか２０分程のやり取りであったが、彼らはアルジェリアの新しい情報を手に入れた様子。 「治安は思ったよりは悪くないらしいから、やはり行ってみる事にしたよ。」 と言う。私には恐くてそんな決断は出来ない。当時は外国人を狙った事件が多発していると、短波ラジオで聞いていた。
チュニジア 南下中、何度も出会ったドイツ人カップル。ここからアルジェリアに進むと言っていたが大丈夫だろうか。  行くのは辞めたほうがいいんじゃないかとは言えないから、 「気を付けて。」 と告げた。私はその後もナフタから西へとペダルを踏んだ。すると目の前には見たことも無い、オアシスのような緑が広がり始めた。
チュニジア 砂漠の中のオアシスなのか。 
チュニジア 周囲は砂地なのにここだけにたくさんの緑が。 
チュニジア ラクダの姿も目にした。  ナフタを過ぎてからちょっと走った所で、テントを張った。 「来る所まで走って来た。」 そんな思いでもある。こんな所まで走って来たのも、やはりもっとアフリカを走っていたかったから。少しだけ足を踏み入れたアフリカだが、これでまた欧州に戻るとなると少し惜しい気もする。 「またこの大陸を走りに来るのだ。」 そのときまでは、アフリカへの思いを大切に胸にしまっておくことにした。
チュニジア ナフタを過ぎてから更に行ける所まで南にと走り、夕刻にテントを張った。 
チュニジア チュニジアの南の果てで見た美しい夕日。いつかアフリカ大陸の南の地で、同じように夕日を見詰めてみたい。  翌日、テントを畳んで再びトゥゼールに向かった。ここでチュニス行きのバスを捕まえて、乗って行く事に。 午前１１時にチュニスへ向けて出発。バスはとても快適。やかましいミュージックが鳴り響いてはいたが、テレビもあり、サッカーの試合などを見る事もできた。 チュニスから５日ほどかけて走った道のりも、バスではわずか７時間。短かったが、多くの出会いや触れ合いがあった気がする。 チュニスに着いたのは午後７時。そこからすぐにイタリアに向かうために港へと向かった。 チュニジアから次は地中海に浮かぶイタリアのサルデーニャ島を目指す予定。あの島を北上し、そこから再びナポリへフェリーで渡るか、それともローマに近い港に渡るのか。サルデーニャ島に渡ってからルートは決める事にしていた。サルデーニャ島行きのフェリーは翌朝８時発。この日は港町の１泊６ドルの宿に投宿してフェリーの出発を待つ事にした。
チュニジア 港にあった安宿６ドル。  翌朝、チケットを買いに行ってびっくり。 「え、サルデーニャ行きなんてないって？」 シチリア島のインフォメーションセンターでも確認していたので、無い訳はないと思っていた。チュニジアの乗り場で時刻だけ確認すれば良いと思ったが・・・してやられてしまった。 「無いならばしょうがない。きっと夏季のみ運行なのかも知れない。という事は、またあのトラパニに戻らなくてはならないのか。」 トラパニ行きは夜の８時の出発と言うことで、早速チケットを買う。それまでは時間もできたので、どこかのカフェに入り、知人に手紙を書くことにした。お昼には町の食堂に足を運んだ。それでも時間があったので、マーケットにも足を運んでみた。
チュニジア 港町の小さな野菜売り場。 
チュニジア 独特の衣服を身にまとった人々。 
チュニジア 港町を少し歩いた。 
チュニジア 町の食堂で。  小さな食堂で食べたのはプラトチュニジア。パンを手でちぎって直径２０ｃｍの大きな丼に入れ、特性の汁をかけるとネコマンマ風に仕上がる。うまそうに見えたが、パンの舌触りがねちょっとしており今ひとつ。あまり好んで食べたいと思う一品ではなかった。 私が好きになったのはレブレビと呼ばれるスープで、店員が目の前で作ってくれるのだが、これを見ているだけでもなかなか面白い。半熟の卵を大きな例の丼に落とし、奇妙な調味料を次々に見事な手さばきで入れていく。何ができるのか楽しみ。辛そうな赤い粉を加え、更にシーチキンを中に入れる。心地よい音を響かせながら、丼をかき混ぜると、最後に薄味そうな煮豆を丼の７分目くらいまで入れる。オリーブオイルを仕上げに器に流し込み、これで出来上がり。フランスパンに漬物、それらと一緒に食べるレブレビスープは絶品。値段は１杯１ドル少々だった。
チュニジア 巧みな手さばきでレブレビスープを作る男。 
チュニジア これがお勧めのレブレビスープ。見た目はそうでもないが、食べるとうまい。漬物もいける。  午後の５時位にトラパニ行きのフェリーに乗り込んだ。船内では偶然に行きも一緒だった親日のドイツ人家族と再会した。 夜の８時から翌朝の６時までと言う船内で、彼らと話しながら夜を過ごした。日本に行ったときの事を話してくれたが、 「街を歩いているときによく『ガイジン』と言われるが、あれは本当にいい感じはしないね。」 そう言っていた。
チュニジア 日本で知り合って結婚したというドイツ人とアメリカ人の夫婦。可愛い子供さんが３人。  チュニジア走行も終わり、再びトラパニの港にやって来た。 「さあ、ここからはスコットランドめざし北上だ。」
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