第１７７話 ５６カ国目 ギリシア 「いけなかったのは私・・・。」  パルテノン神殿とギリシア国旗。
アラスカ出発 １９９２／４／１〜ギリシア １９９５／２ ギリシア出国までの走行距離 約６１４３９ｋｍ 
欧州・中東走行 １９９４／６／２９〜１９９６／２／１ 走行距離 約３４１３１ｋｍ 
ギリシア走行 １９９４／２／２０〜１９９５／２／２６ 走行距離 約３０３ｋｍ  |
|
１９９５年３月３日。約１週間の予定でアテネへと向かう事になった。この間私の飛脚号と荷物はペンションに預かって貰う事にした。もちろん、またアテネから戻ってきたときに１泊させてもらう事を告げた。 余り列車などで移動した事のない私にとって、交通機関での移動は大変。どこで切符を買ってどこから乗るのか。駅で降りてからどうやって安宿を探すのか。自転車野郎とバックパッカーの旅はやはり違うのだと実感する。観光立国とあり、安宿はすぐに見つかった。後は写真の現像所を見つけ、ここでスライドフィルムを現像してもらった。 １週間のアテネ滞在は、旅行小切手の購入に雑記まとめ、送付物のまとめにスライド整理。そして観光にも出掛けた。アクロポリスの丘にパルテノン神殿、イロドアティスコの音楽堂、ゼウス神殿。更に１８９６年、第1回の近代オリンピックが行われたアテネ競技場。学校の教科書に出てきた固有名詞も、実物を目の前に、 「おおー」 と、感心してしまうのだった。観光の見所は本当に多い。
ギリシア アテネで滞在したホテル。１泊は１３ドル。ここに１週間も滞在して手記まとめやスライドの現像などを行った。 
ギリシア 衛兵交代の図。 
ギリシア 見入る観光客。 
ギリシア パルテノン神殿と大きなギリシア国旗。
ギリシア パルテノン神殿。 
ギリシア パルテノン神殿。 
ギリシア アクロポリスの丘からアテネの街を望む。 
ギリシア アクロポリスの丘から。 
ギリシア アクロポリスの丘からの眺め。 
ギリシア 坂の途中からアテネの街を撮った。 
ギリシア イロドアティスコの音楽堂。見事な円形を描いている。古き時代の美しい建造物は見ていて飽きがこない。 
ギリシア １８９６年。第1回の近代オリンピックが行われたアテネ競技場。 
ギリシア 「花より団子」私は観光よりもついついこちらに目がいってしまう。せっかくだから写真を撮らせてもらった。 
ギリシア アテネからバスに乗って岬に向かった。ちょうど夕焼暮れときだった。  アテネの街で主な観光を済ませ、雑用も終らせ、３月１０日には再び飛脚号待つパトラへと電車で戻った。電車の中では学生らしき若い女の子が分厚い本片手に私に近づいてきた。 「あのー、あなた日本人ですよね？」 「はあ。」 「あのーホンダはどうしてアメリカのマーケットにほにゃらら、うんぬん・・・。」 「？？？」 突然経済学的な訳のわからん質問を英語で聞いてくるので、困ってしまった。 「もし良かったら、わたしの隣に座ってお話ししません？」 ２０才前後でボインで可愛い娘だったが、話題が話題だけに、 「いやー、その手の話はちょっと・・・ごめんなさい。」 と断ってしまった。その後、 「なんで隣の席に移らなかったのかなあ。」 と、もったいない気持ちになったのは下心が働いたせいだろうか。 ５時間ほどの、のんびりした電車移動を終えパトラ着。ホテルへ戻り、イタリアへの出航準備にとりかかる。フェリーは毎日２１時に出航するとの事。それならば古代オリンピック発祥の地へ日帰りで行けることになる。私は慌ててパトラの駅へ出向いてオリンピアへの出発時刻を聞いて、慌しく予定を組んだ。 翌日３月１１日。古代オリンピック発祥の地を訪ね、朝の６時８分に、バックパッカーにでもなった気分でのんびり電車に乗り込んだ。電車はとてもローカルな雰囲気で、地元の人々がポツリポツリと乗車している。私の自転車のように、ガタガタと振動が尻から心地よく伝わってくるのがまたいい。 １９９８年２月には私の地元長野でオリンピック。この日私が目指した所は、紀元前７７６年、オリンピックが発祥した地。長い年月を経て遠い東アジア、それも私の故郷長野でオリンピックが行われると言うのがとても不思議な感覚。 ピルゴスに到着し、そこから1時間おきにオリンピアに向けてバスが出ている。そのバスに揺られる事３０分。野の花が咲き、みやげ物屋が並ぶ、春真っ盛りのオリンピアに着いた。バスから降りた私は、まずオリンピック博物館に足を運んだ。
ギリシア オリンピック博物館で。  入場料を払うと、愛想のない管理人おやじが、 「写真は４枚が限度だ！」 まるで叱り付けるかのように言ってきた。 「何なんだ、いったい？」 博物館の主な展示内容は、過去のオリンピック選手の写真、名前、メダル、バッジなどだった。昔、テレビで見たり聞いたりした開催地の名が次々に目の前に現れる。第１８回１９６４年東京オリンピック、第１１回１９７２年札幌オリンピック、カルガリーにレイクプラシッド、メキシコにモスクワ。そしてあのサラエボも。 冬季オリンピックの始まりは、１８９６年のアテネの近代オリンピックから遅れる事２８年、１９２４年にフランスのシャモニーで行われたのが第１回。長野は第１８回のオリンピック開催地となる。ガイドによると紀元前７７６年の初めてのオリンピックは短距離走のみ。ゼウスの祭典時の奉納競技として行われたのがオリンピックの始まりだという。優勝者にはオリーブの小枝の冠が与えられ、国費で一生暮らす事が出来たそうだ。
ギリシア オリンピックの開催地の一覧が掲示してある。 
ギリシア １９６４年東京オリンピック。 
ギリシア １９７２年札幌オリンピック。  オリンピック博物館を後に、オリンピアの遺跡に向かった。博物館から徒歩で約２０分。風もなくおだやかな太陽の下、小鳥のさえずりが耳に入る小道を歩いた。遺跡の中には１９２ｍ走の競技場がある。ここが古代オリンピックの開催地。野の花が咲き誇り、緑の木々と古代遺跡との調和のとれた、テントでも張って居付いてしまいたくなるほど美しい地。広大な敷地の中に残るオリンピア遺跡。ここを歩いていると、思わず駆け出してしまいたくなるのだった。
ギリシア オリンピアの遺跡へ。 
ギリシア 美しい遺跡の数々。 
ギリシア 小鳥のさえずりも聞こえる素敵な場所。 
ギリシア 古代の競技場に着くと、二人の観光客が競争をしていた。 
ギリシア 野花が咲く美しい草原。紀元前７７６年、ここで初めてオリンピック競技が開催された。  昼食をファーストフード店のスパゲティで済ませ、午後の便で再びパトラへと引き返した。 宿に帰って預けた荷物を返してもらおうと思うと、主は、 「代金を払ってもらう。」 と言う。 「預けたらお金がいるなんて、そんな話は一言もしなかったじゃないか。」 そう言うと、 「ここはマガジンじゃない。」 と言った。お金を払わなければ返してくれないと言い張るので、こちらも頭に来てしまった。前もっていくらと言ってくれればそれで良いのに。終いには主人は、 「オレはマフィアだ。」 などと脅す始末。返してと言っても返してくれないので、私はツーリストポリスと言う所に行く事にした。ギリシャではなぜかそんな名のポリスステーションがある。と言う事は旅行者とのトラブルが多いということなのか？ オフィスに行くと、女性の係官が応対してくれた。彼女が宿に電話すると、 「『そんな事はない、荷物は渡す』と言っていますよ。」 と言う。 「？？」 私が再び宿に帰ると、荷物と言う荷物が全てホテルの外に放り投げられていた。 「あ、ああー。」 かと思ったら主が私に襲い掛かってきた。私が本気になったら倒せるような５０代くらいの男だ。 「この野郎、ツーリストポリスになんか行きやがって・・・」 と言いながら私にキックやら、パンチやらしてくる。そこに地元の人が止めに入ってくれた。その後再びツーリストポリスに連行され、二人で言い合い。 「お前が金を払えばそれで済むんだ。」 と主。 「有料なんて前もって言わなかったくせに！それにアテネに行っている間の分は請求もしなかったじゃないか。」 「うちはマガジンじゃない！」 結局ツーリストポリスの女性が裁定を下す事になった。 「あなたは彼にお金を払いなさい。」 悪いのは私と言う事になった。 「・・・そんな。」 「預けたのだから、払うのは当然。」 「・・・でもアテネに行っていた時は何も言わずに預かってくれたのに、それに何泊もして、有料なんて一言も・・・」 「払うの？払わないの？払わなければ監獄行きよ。」 「・・・。」 しょうがなく払った。悪いのは私だったのか。でも奴の方が悪人の気がした。お金を支払う条件や筋が通っていないのだ。そこに言って支払った金は１０００円ほどだったが、金額の問題ではなかった。悪いのは主。私はそう思っていた・・・。 しかし、考えてみれば、アテネに1週間、その後オリンピアにも日帰りで行って、宿に帰って来たのは午後の３時過ぎ。いくらこの宿に２泊したとは言え、荷物を長期間預かってもらったのは事実。それに主は、 「ここはマガジンじゃない。」 と言っていた。きっと預けるための倉庫などではない、という意味合いで言っていたのだろう。思うに私はあの主を、「荷物を預ける」と言う行為で侮辱していたのかもしれない。それを面白く感じていなかった主は、つい、 「金を払え！」 と言った・・・。やはり悪いのは私。あのとき主の顔を立てて、ありがとうくらい言って、言われた金額を素直に払ってあげれば問題は浮上しなかったはず。複雑な思いだったが、冷静に考え直すと、 「やはり素直に払うべきだった。」 と反省。
ギリシア パトラで問題を起こしたペンション。「悪いのはやはり私・・・？」 
|