第１１６話 ３４カ国目 ベネズエラ 「さようなら南米大陸」  カナイマ国立公園 エンジェルフォール。
アラスカ出発 １９９２／４／１〜ベネズエラ １９９４／６ ベネズエラ出国までの走行距離 約４４１８１ｋｍ 
南米走行 １９９３／３／１〜１９９４／６／２８ 南米全走行距離 約２１６９７ｋｍ 
ベネズエラ走行 １９９４／６／１６〜１９９４／６／２８ 走行距離 約６９１ｋｍ  |
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１９９４年６月１６日、トリニダード・トバゴの空港で一夜を明かした私はポートオブスペインを後に、ベネズエラはカラカスへと向かうべく、飛行機に乗り込んだ。 機内の窓からベネズエラの陸地が少し見えている。乾燥した緑の少ない土地が目に入り、再び酷暑の中の走行が始まるのかと思うと、うんざりする気もした。ブラジルにスリナム、ガイアナ。更にベネズエラ。何か分からない慢性的な疲労感が、体のどこかにたまっている感じがする。これは「南米疲れ」とでも言うのだろうか。 入国審査官は私のビザを見ると、行って良しのジェスチャーを出した。久々のスペイン語にどこか戸惑いを覚える。荷物を受け取り、空港の外で自転車の組み立てを始める。するとしばらくしてタクシーの運転手たちが集まってきて、 「どこに行くんだい。」 と聞いてきた。 「シウダーボリーバルまで行って、そこからエンジェルフォールを見に行きたいんです。」 そう言うと、 「あのシウダーボリーバルの街まで自転車でかい？」 と、笑われてしまった。暑い中の走行は本当に辛い。しかし、どうしてもエンジェルフォールは見たい。となれば、せめてあの街までは走らねばならない。タクシーの運転手の皆さんと写真を撮って、空港を後に出発することにした。
ベネズエラ 興味深く私の自転車の所にやってきた空港にいたタクシーの運転手のみなさん。  空港では両替をし、ベネズエラ通貨、ボリーバルを手に入れ、地図も購入して早速走り出すことにした。
ベネズエラ ベネズエラの通貨ボリーバル。  空港からカラカスに向けて、まるで高速道路のような道を走り続けていると、前方に料金所が見えた。いやな予感。もしかしたら自転車は通れないかもしれない・・・そう思いながら聞いてみると、やはり自転車は「ノー」の答え。料金所の係官は、 「トラックにでも乗せてもらいなさい。」 と言う。私はヒッチハイクはできるだけ避けたかったので、 「他にカラカスに向かう道は？」 と聞くと、 「他にもあるけど山の中だよ。それに危ない道だ。」 崖崩れでもあるのかもしれないと思ったが、自転車なら大丈夫と思い、その危険な道をカラカスに向けて上って行くことにした。その危険な道と言うのは、旧道のようで、狭い道は山の中へと続いている。地元の店に入って、 「カラカスの街に続く道はこれでいいんですか？」 そう聞くと、 「なんでアウトピスタを走らんのだ？」 「あっちは自転車は走れないんです。」 「車に乗せて行けばいいじゃないか。」 「いや、車はちょっと・・・カラカスまで走りたいので。」 そう言うと、店にいた人々は、 「こっちの道は強盗が出るぞ。」 そう言った。私はペルーで数日間一緒に走った、フランス人サイクリスト、ダニエルたちの事をすぐに思い出した。彼らが南米縦断を始めて、真っ先にピストル強盗に遭ったのが確かベネズエラのカラカスだったはずだ。 「もしかしたら私も・・・。」 そう考え始めると、南米の最後の最後に来て強盗にやられてしまうかもしれないと、怖くなり、再びアウトピスタの料金所に戻ってヒッチハイクすることを決断した。親指を立てて車を止めるという行為は初めてだった。１度もしていないだけに、南米の最後に来てヒッチハイクとは少し悔しい気もしたが。 ５分位は待っただろうか。私のヒッチハイク姿を見て、フォードのトラックに乗った若者が車を止めた。彼の名はラファエル氏。 「どこ行くんだい、カラカスかい？」 「ええ、そうです。」 「乗っていきなよ。」 そう言ってくれた。トラックの後ろに自転車を載せ、１７ｋｍのカラカスの上り坂を車は走り始めた。自転車で上ったらかなり苦しそうな坂だが走りがいはある。最後に来てこの道を走れないと言うのも悔しいが、仮にあの旧道を走っていたら、本当に強盗に遭っていたかもしれない。そう考え直すと納得する事ができた。 カラカスは高層ビルや、レンガ造りの家などが目立った。コロンビアやメキシコと雰囲気が似ており、再び中南米の走行が始まるような、懐かしい感覚が蘇って来た。 少し標高の高いカラカスに無事着けたので、助かったと、ラファエル氏にお礼を言うと、 「これからどこに行くんだい？」 「安いホテルを探そうと思っています。」 「そうか、それならあそこがいい。」 そう言って、街中にある７ドルの宿に連れて行ってくれた。宿探しまでラファエル氏に面倒をみてもらい、すっかり世話になってしまった。ヒッチハイクの旅をしている若者に出会ったことも何回かあったが、実際にやってみると、なかなか面白いと言うことが分かった。もちろん車中では色々と話も聞けた。ベネズエラは産油国でもあり、石油は安い。興味半分でラファエル氏にガソリン１リッターの値段を聞くと、５ボリーバルだと言った。 「え？？５ボリーバル？」 私は１ドルを１７０ボリーバルで両替しているから、1ドル１００円で計算したとしても、リッター約３円！！私の計算ミスだろう、そんな馬鹿なことがあるわけないと思い、再び計算してみるが、やはり、リッター３円・・・。しかし、よく見ればベネズエラの車はその多くが古いアメリカ映画にでも出てくるような燃費の悪そうな車。「ボボボーン」と音を立てて走るアメ車なのだ。ガソリンが安いので、燃費の悪い車を走らせていても燃料費が高いとは思わないのかもしれない。 ラファエル氏は、 「良かったらまた、夜にでも会って話をしないか？」 そう誘ってくれた。私は喜んでオッケーする。街では旅行小切手の購入に、大使館に手紙を取りに行ったりと、雑用をこなした。大使館でベネズエラの治安などの事を尋ねると、経済が悪化してインフレがひどくなっている。山賊や偽警官なども出没するので気をつけてと忠告してくれた。 夜はラファエル氏の家に呼ばれた。マンションのエレベーターには鍵があり、厳重な仕組みになっていた。部屋に入ると、なぜかキューバ人が一人居候していた。世話をしてあげているらしい。亡命者なのかどうかは知らないが、ラファエル氏は彼の面倒を見てあげているのだと言った。 ６月１７日、南米は最後の目的地、エンジェルフォールに向けて走り出す。このカラカスには再び戻ってくる予定でいるので、荷物の一部は安ホテルに預けていくことにした。 「１０日くらいしたらまた戻ってきますから。」 そう言い残し、カラカスを出発。自転車の重量も少し軽くなり、これなら楽に走れそう。荷物は軽くなって良かったが、酷暑だけはどうにもなりそうはなかった。 市内を抜け、アウトピスタとは別の旧道を走り出す。とても車の通りが少ないので気分は楽。しかし静まり返った山道の雰囲気は今にも山賊が出そうな感じ。
ベネズエラ 旧道から見たベネズエラのアウトピスタ。山の中を走る旧道は山賊が出そうでちょっと恐ろしい。  いつ交換したのか、ウルグアイで買った台湾製のタイヤも限界になったので、木陰で新しいタイヤに交換。 日中は３０度以上あり、途中にある商店に寄ってはジュースを飲みながら走った。村に寄ると、人々は木陰で鉄の玉を投げて何かゲームをしていた。
ベネズエラ 途中の村で目にした珍しいゲーム。 
ベネズエラ 鉄の玉を当てて何かを競っていた。  カラカスから１２３ｋｍ走ったところでようやく小さな街、エルグアポに着いた。とても小さな村で、宿はありそうもなかった。道行く人に、 「この村に宿みたいなのはあります？」 と聞くと、 「シルビーナゴンサレスさんの家がいいんじゃないかな。」 そう教えてくれた。シルビーナさんの家はどうやら宿らしい。早速その家を訪ね、 「あのーシルビーナゴンサレスさんのお宅ですか。１泊お願いしたいんですけど・・・いくらですか。」 そう聞くと、 「１００ボリーバルよ。（約５８円）」 １００ボリーバルは安い。しかし、設備は宿と言うよりは普通の民家に毛が生えたようなものだった。 「ここは雨はそんなに降らないからね、この水を使ってシャワーの代わりにしてちょうだい。」 宿のおばさんはそう言った。一応透明度はあるが、よく水を見ると、ボウフラのような虫がヒクヒクと浮いている。汗だくの体で、シャワーを浴びないわけにもいかない。しかし、ボウフラヒクヒクの水はいくら私と言えども使うことはできない。結局塩まみれの体を少し拭いたくらいでベッドに横になってしまった。 このときサッカーのワールドカップが行われており、家族の皆さんはテレビにかじりつき、韓国対スペインの試合を夢中で見入っていた。
ベネズエラ エルグアポのシルビーナゴンサレスさんの宿。民家に毛が生えたような宿だった。  翌朝７時。涼しい内にできるだけ距離を稼いでおこうと出発。５８円の宿を後に、シウダーボリーバル目指し走り出した。しかし朝方の快適走行は午前中の９時までで終わり。それ以降は再びいつもの強い日差しがジワリジワリと肌に当たる。黒いアスファルトはまるで熱い鉄板のように変わっていく。 朝方、国道を走っていたら食堂のような屋台を見つけた。見るからにうまそう。おばちゃんの上手な呼び込みも手伝って、このレストランに寄っていくことにした。走行は中断。情けないが、食べ物には本当に目がない。 見た目はホットケーキのような、トルティーヤのような食べ物にも見えた。なんて名前なのかおばちゃんに聞いて見ると、 「カチャパコンケソ」 と言う。スペイン語はなんだか分からない。「コンケソ」は「チーズと一緒」という意味なので、チーズ入りの何かと言うことになる。肝心の味の方は、やはりホットケーキのようで、自転車野郎のモーニングにはぴったりの味。
ベネズエラ 「カチャパコンケソ」を焼き上げる屋台のおばさん。自転車野郎のモーニングにはぴったり。  ジャングルの林の中を走り、再び一軒のレストランを見つけたので、また入る。すると今度はアレパという料理が出てきた。とうもろこしの粉で作って焼いたトルティーヤに、鶏肉や牛肉を挟んで食べるのだが、これがまた美味い。走りながら腹が減るとエネルギー補給と勝手に題し、レストランを見つけては食べてばかりいた。
ベネズエラ 屋台なのかレストランなのか分からない。とにかく雨をしのげるトタン屋根の下で食べるアレパはうまかった。  荷物も軽く、距離も稼げると思った。しかし思うように距離は伸びず、結局１４１ｋｍ走り、クラリネスと言う小さな街のホテルに落ち着くことにした。
ベネズエラ クラリネスのホテル。 
ベネズエラ 庭には珍しい真っ赤の葉をつけた木が。  翌日６月１９日。いつものように走り出すが、とても暑く、朝から水分を取り過ぎてお腹はタポタポ状態。今までは山も多かったが、しばらくは海岸線を見ながらの走行。左手には海も見え出し、爽やかな風を期待したものの、それほどでもなく、気温もさほど下がらなかった。植物を見ても乾燥地帯に生えるようなものが目立っていた。
ベネズエラ 涼しくなると予想した海岸線。しかし吹く風は熱風のよう。 
ベネズエラ 私の走った海岸線。 
ベネズエラ どこか涼しげに木の枝に止まる鳥たち。 
ベネズエラ 壮大なジャングルの地平線風景。  暑い中の走行で私の食欲は湧かず、水分でお腹が膨れてしまっていた。夕刻の４時くらいになってようやく涼しくなり、食欲も回復。ちょうど一軒の鶏肉屋さんを見つけたので、ここで鶏の丸焼きの半分を腹に詰め込んだ。カロリー補給を終えて、そこから更に走ること４時間。夜の８時過ぎにようやくアナコという街に到着。安宿を探そうと、早速街の人に聞いてみた。すると、 「夜も遅いから安宿のある地区には行かない方がいい。」 そう言ってくれたので、すぐ近くにあった９ドル程の高値のホテルに落ち着くことに決めた。爽快にシャワーを浴びて、汗も砂埃も洗い流しすっきりさっぱり。クーラーとテレビもあり、真昼の走行を思い浮かべると、そこは天国。こんな贅沢があったのかと改めて思った。心身共リラックスして明日の走行に備える。 翌日も１日中暑い中の走行が続いたので、もう本当にバテた。高速道のような道をひたすら走った１日は終わった。午後６時にエルティグレと言う街のホテルに入り、ベッドに倒れ込んだ。バタンＱだ。どうも慢性的な南米疲れのようで、どこかで休暇をとって完全な体力回復を待ちたい、そんな気持ちもあった。私は暑さには弱いらしい。 １９９４年６月２１日。実質的な南米走行もこの日が最後となった。 「今日はおそらく最後になるだろう。」 そう思うと、自然にペダルを踏む足に力が入った。
ベネズエラ シウダーボリーバルの街まであと７５ｋｍ。  周囲の緑は少なくなり、干乾びたような低木が辺り一面に茂っている。ガサガサと音がするので、見てみればトカゲ。水の少ないところにやってくると、私の体も乾燥して干乾びてしまいそうな気になる。 しばらくして大きなオリノコ川に着いた。ここには大きな長い橋がかかっていた。自転車では走れない様子で、軍人に止められ、 「何か危険なものはないかね？」 とチェックを受けた。ここでは車の荷台に載せられて渡ることになった。橋を渡ると南米走行のゴール地点、シウダーボリーバルだ。 「やっと着いた・・・。」 オリノコ川沿いにある５ドルの安宿に投宿。ここで、長かった南米走行は幕を閉じることになる。
ベネズエラ シウダーボリーバルの安宿で。  茶色いオリノコ川は、まるでアマゾンを思わせた。その川沿いに座り、とりあえずビールで乾杯。実感は湧かないが、これで長々走った南米大陸、いや、アメリカ大陸ともお別れになる。でもどうしても、走り切ったと言う実感は湧かなかった。 翌日６月２２日。ベネズエラに来た目的はなんと言ってもカナイマ国立公園のエンジェルフォールである。日本一周中に出会い、私の旅にアドバイスをくれていた、松本氏の南米お勧め１０ヶ所、その中にカナイマ国立公園の「エンジェルフォール」は入っている。広大だった南米大陸には素晴らしいところがたくさんあった。しかしこの最後のエンジェルフォールを見なければ、南米縦断に終止符を打つことはできない。 エンジェルフォールは空路、水路、それに徒歩でようやく辿り着ける、言ってみれば秘境のようなところ。 街の旅行代理店に顔を出すと、ツアー代は２００ドルだと言った。それはちょっと高すぎやしないかと言うと、 「空港に直接行ったら、そこできっと安くできるわ。」 そう言うと、空港の代理店を紹介してくれた。自転車で早速空港へ向かった。 空港で代理店を営んでいたのは、ドイツ人のマルティン氏。このベネズエラに移住し農業も営んでいると言う。そんな彼がなぜか代理店業務も行っていたのだ。彼の売るチケットは空路が往復で６０ドル、それプラス現地の滞在費とガイド料と言うことで、かなり安く見積もってくれた。これで安心してエンジェルフォールにも行くことができる。 カナイマ国立公園への道も開け、段取りもできたので、後はホテルに荷物を預け、エンジェルフォールへの出発準備をするだけだった。 時間ができたのでシウダーボリーバルの街中に食事に出掛けた。ガイドをしていたことがあるという地元の青年にエンジェルフォールの話を聞く。 「テーブルマウンテンも滝も本当に美しいよ・・・。」 自慢するように言ってくれた。本当に楽しみだ。 私は以前からちょっと気になっていたことがあったので、青年に聞いてみた。 「この国はすごい資源の宝庫なんだよね。ダイヤに金に石油・・・。これだけ資源が豊富なのに、貧富の差が大きいように思うんだけど。」 そう聞くと、青年は、 「汚職だろう。」 そう冷めて言った。 翌日６月２３日。自転車とその他の荷物はホテルに預かってもらい、必要最小限の荷物を持って、シウダーボリーバルの飛行場に向かった。ドイツ人のマルティン氏は、 「カナイマに着いたらトーマスという男がいるはずだ。彼がガイドで世話人だからね。」 そう言ってトーマスという男を紹介してくれた。小さな４人乗りのセスナでシウダーボリーバルからカナイマ国立公園のカナイマ村へと向かっていった。
ベネズエラ アマゾン上空を飛び、カナイマ国立公園にと向かって行く。  金の採掘場のような地区を眼下に眺めていると、次第に風景は緑と水の多い、ジャングルのような地区へ変わっていった。そして大きな川と滝が目に入るようになり、周囲の風景は別世界のような、美しい国立公園へと変わった。
ベネズエラ カナイマ国立公園近辺にやってきた。  空港で出迎えてくれたのはトーマス氏の助手らしい若い男、アントニオ氏。３０分くらい待つと、空港横の川向こうからモーターボートに乗って１人の男がやってきた。勇ましい姿がそこにあった。私を迎えてくれた若い男は、 「彼がトーマスだよ。」 そう言った。私が想像していた「ガイド」とは少しイメージが違っていた。彼はインディオのような、先住民族のような雰囲気の顔つき。彼こそがエンジェルフォールへの案内人と言うことだった。
ベネズエラ カナイマ国立公園、エンジェルフォールへの案内人、彼がトーマス氏だ。  トーマス氏は船から降りると、私にこう聞いた。 「君はスピルバーグの映画、『アクラノボービア（スペイン語タイトル）』を見たことがあるかい？」 「アクラノボー・・？いえ・・・。」 「あの映画に私は出演しているんだよ。」 そう誇らしげに言った。トーマス氏はツーリストを相手にガイドをしているが、宿泊施設の管理人もしていた。その宿は川を渡った島にあるのだそうだ。川の向こうにはアチョ滝と呼ばれるビックな滝があり、この川からの眺めは壮大の一言。トーマス氏の宿泊施設のある島に着くと、ハンモックなどもあり、 「ここが君の寝床だよ。」 と案内してくれた。夏はいつも旅行者で賑わっているが、日本人は珍しい様子。欧米旅行者が多く、中でも特に多いのはドイツ人だそうだ。
ベネズエラ アチョ滝を望んで。 
ベネズエラ アチョ滝。近くまでやって来ると、もう大迫力。 
ベネズエラ アチョ滝。 
ベネズエラ アチョ滝。眺める角度によって違った風景が楽しめる。 
ベネズエラ アチョ滝。 
ベネズエラ アチョ滝。 
ベネズエラ アチョ滝。 
ベネズエラ アチョ滝。トーマスの宿泊施設から眺めたアチョ滝。 
ベネズエラ アチョ滝。 
ベネズエラ アチョ滝。 
ベネズエラ トーマスの宿泊施設から眺めた風景。 
ベネズエラ アチョ滝。 
ベネズエラ トーマスの宿泊施設と庭。 
ベネズエラ トーマスの庭。おいしそうなマンゴーは木の枝から勝手に取って食べ放題。 
ベネズエラ アチョ滝。トーマスの宿泊施設から眺めたアチョ滝。 
ベネズエラ カナイマ国立公園には緑と水が溢れている。  エンジェルフォールを見て帰ってきたというドイツ人グループと、イスラエル人親子と、皆でサポ滝へ歩いて行くことになった。徒歩とボートで移動することになる。小さなツアーみたいなものだ。
ベネズエラ ミニツアーに出掛けるトーマス氏。 
ベネズエラ トーマス氏の奥さん（右）。 
ベネズエラ ドイツ人カップル、イスラエル人家族とサポ滝へ。 
ベネズエラ 滝の裏側を歩くことができる。 
ベネズエラ サポ滝で。 
ベネズエラ サポ滝。 
ベネズエラ 滝の裏側でポーズを取るドイツ人。 
ベネズエラ 船に乗る前に遊ぶイスラエル人家族。 
ベネズエラ サポ滝の裏側から見た風景。  水着で滝の流れる裏側を歩いたりした。近くには洞穴のようなものもあり、そこを指差しトーマス氏は、 「私ら親子は昔、１０年もの間、この岩の下で暮らしてきたんだ。」 そう言った。我々旅行者はトーマス氏の話を聞きながら、彼が作ってくれたコーヒーを頂いた。ただ者ではないトーマス氏とは思った。しかし、こんな所で自然とともに１０年も暮らしていたなんて、半分羨ましいような、半分は大変そうな、どこか複雑な思いだった。
ベネズエラ トーマス氏はその昔、１０年もの間、ここに住んでいたのだと言った。 
ベネズエラ トーマス氏と奥さん（右）。手前の子供たちはイスラエル人の子供たち。  夜、再びトーマス氏のキャンプ場に戻り、おいしいパスタを頂いた。その後ビールを飲みながら、トーマス氏は私に夢を語ってくれた。 「わしは太陽電池を買って電気を起こすんだ。そして、目の前のアチョ滝から水をひいて自然の力で全てを補って、ツーリストに満足してもらうキャンプ場を造るんじゃよ。」 自然の中で生きてきたからか、ドイツ人観光客の影響なのか、素晴らしい自然との共存のアイデアを持っていたのにはびっくりさせられた。もし、またいつかこのカナイマに来る時があれば、太陽電池がひょっこりと設置されているかもしれない。
ベネズエラ 自然の中で生き抜いてきたトーマス氏の姿には、どこか力強さが感じられるのである。  翌日６月２４日、エンジェルフォールに向け８時半に出発と言っていたが、待たされる事延々６時間。エンジェルフォールに向けてツアー一行が出発したのは、午後の３時になってから。荷物を積み込んで、イギリス人若者グループにスペイン人の男性、地元ベネズエラの旅行者などと共に、モーター付きのカヌーでカラン川の上流向けて進みだした。 川面から目にする風景はとにかく素晴らしい。どうやったらあんなに美しいテーブルマウンテンが出来上がるのか、ボートに付いているモーターの音がなければ、神秘の風景が成す演出効果も１００点満点なのだが・・・。それにしても密林ジャングルに囲まれた辺境の地は、息を呑むほどに美しい。
ベネズエラ 夕刻のカラン川を上流へと遡って行く。 
ベネズエラ ここは同じ地球なのか？かつて見たことのない風景に唖然としてしまう。 
ベネズエラ カラン川上流へとツアー一行は向かっていった。 
ベネズエラ この上流にエンジェルフォールがあるはず。 
ベネズエラ カラン川で。 
ベネズエラ カラン川からの眺め。 
ベネズエラ いったい何メートルあるのか。テーブルマウンテンの上を眺めて。  １日で目的のエンジェルフォールに着く事はできないので、途中で一泊することになった。ジャングルにテントでも張るのかと思えば、そうではなく、もう準備されたキャンプ場が林の中にあり、ここのハンモックに揺られて一夜を過ごすことになる。スペイン人旅行者と、地元ベネズエラ人の青年たちと話をしながら夜を過ごした。 翌朝の６時半。ツアー客らと一緒に朝ご飯を済ませ、ボートに乗り込んだ。勢い良い流れの上流へ、ボートは水をバシャバシャとかぶりながら進んでいった。
ベネズエラ いよいよエンジェルフォールに向けて。 
ベネズエラ モーターボートは水面を切って進んで行く。 
ベネズエラ かつて見たことのない風景が次々に現れる。  写真をパチパチやっていると、エンジンが突然止まり、ボートは川の流れに流されて下流へと向かっていった。 「うわー。」 乗っている旅行者は半分焦るが、何とかエンジンもかかり、再出発。ところがその後もエンジンは３度ほど止まった。エンジン音が止まると、これまた静かで良かった。しかしエンジンが５分もかからない場合もあり、そのときはドンドン下流に流され、終いには川岸の枝に引っ掛かり、皆して伏せたりもした。そうこうしながら上流へ進んで行くと、前方に霧のかかったテーブルマウンテンが見えた。その霧がすっと引け、テーブルマウンテンの上の方から白い糸のような細い滝が見えた。 「あれか？」
ベネズエラ 天気も次第に回復。青空も見えてきた。 
ベネズエラ どうやらあの、マウンテンにエンジェルフォールが。 
ベネズエラ 陸に上陸していよいよ滝を目指して歩き出す。  午前１１時。我々一行はエンジェルフォールに向けて歩き出すことになった。ジャングルの中をどれだけ歩いただろうか。しかしそれほど疲れは無かった。きっと滝が見たい一心で、まだか、まだかと焦っていたせいかもしれない。 歩いた時間は約１時間。滝の音は次第に大きくなっていき、いよいよエンジェルフォールの滝壷までやってきた。 「ウォー・・・。」 誰が「天使の滝」と名付けたのだろう。ザアザアと勢いよく流れ込む滝と言うのではなく、それは本当に、天使が舞い降りるような感じの幻想的な美しい滝だった。
ベネズエラ ようやく出会えた「天使の滝」。これがエンジェルフォールなのか。 
ベネズエラ 水なのか霧なのか分からない。 
ベネズエラ テーブルマウンテンから流れ落ちている。 
ベネズエラ エンジェルフォール。 
ベネズエラ 豪快に流れるエンジェルフォール。 
ベネズエラ 神秘の世界。 
ベネズエラ エンジェルフォール。 
ベネズエラ エンジェルフォール。滝の上を眺めて。 
ベネズエラ エンジェルフォール記念写真。 
ベネズエラ エンジェルフォール。南米の最後を飾るにふさわしい大自然の風景。 
ベネズエラ よく見ると白き天使が舞っている？ 
ベネズエラ エンジェルフォール。滝壷は手前の下の方に。 
ベネズエラ これもエンジェルフォール。 
ベネズエラ 滝の上。 
ベネズエラ 本当にここまで来れてよかった。 「これがエンジェルフォールか、すごい・・・。」 しばらく時間もあったので、我々は滝壷で泳ぎまわった。皆で写真を撮り合いながら、興奮して滝壷やその風景を思う存分に満喫した。 「エンジェルフォール。南米の旅の最後を飾るにふさわしい、本当に美しい滝だ。」
ベネズエラ 遠方から見たエンジェルフォール。 
ベネズエラ ジャングルから見たエンジェルフォール。  ３時間ほど滝を眺めながらゆっくりして、再び川を下って行った。天気も快晴。雄大な滝の流れを私は最後まで見つめていた。 ボートはカナイマ村のトーマス氏の島に再び戻っていった。
ベネズエラ さようなら天使の滝・・・。  トーマス氏には色々と教わったような気がした。自然の中で自然と共に生きる人の姿には、どこか魅力があった。言葉少なくとも彼は何かを訴えていてくれたような、そんな気がした。 トーマス氏に別れを告げ、カナイマから自転車の置いてあるシウダーボリーバルの宿に空路で戻った。その後は足早に空路でシウダーボリーバルからカラカスに舞い戻り、更にカラカスのホテルへ預けた荷物をバスで取りに行き、南米脱出の準備が全て整った。 「走り終わった・・・。これでようやくヨーロッパへ行くんだ。南米は走り終えたんだ。」 １９９４年６月２８日、カラカスからマイアミへ向かい、そしてドイツのフランクフルトを経由して夏の北欧を走るべく、フィンランドのヘルシンキに舞台を移すことになった。 約２年と３ヶ月に及んだアメリカ大陸縦断の旅は、こうして終止符を打つことができた。３４カ国と約４万４千ｋｍ。長かったアラスカハイウェー、夢に見たカナダ、親切な人に出会ったアメリカ。貧困を真剣に考えさせられた中米。小さな島々にもそれなりの個性があったカリブ海の国々。そして憧れの南米大陸の走行の思い出は、一言では語り尽くせない。 動物たちの楽園ガラパゴスで動物たちが教えてくれたこと。エクアドルアンデスの走行の思い出。ペルーでは自転車野郎、ギィさんにも出会った。彼と共に駆け抜けたアンデスは本当に楽しかった。 大自然に翻弄されたパタゴニア。私の自然観を覆すような素晴らしい大地がそこには広がっていた。走り続ければいつかは到達できる、そう信じて走り続けて、南米最南端のウスアイアにも到達できた。 自分の足でペダルを踏みながら、アメリカ大陸の思い出を心に刻んだ。走って、触れ合って、感じて、見て、聞いた。アメリカ大陸の旅もこれで終わってしまう。そう振り返ると、悲しいような気もする。しかしまた、新たな大陸を走れるのだと言う、喜びのような希望のようなものも心のどこかにあった。 「まだまだこれからだ。ヨーロッパ、アフリカ、アジア、世界の道は長い・・・。」 ヨーロッパへと向かう機内で、アメリカ大陸への最後の別れを心の中で告げた。お世話になった人の事が頭に思い浮かんでくる・・・。 「楽しかった、辛かった、苦しかった、感動した思い出・・・。」 色々な素晴らしい思い出を心からありがとう。アメリカ大陸で出会った人全てに、感謝を、心から伝えたい・・・。
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