第８０話 ２５カ国目 ボリビア 「アンデス高地２人旅」  チチカカ湖畔沿いを走るパティ。 一匹の野良犬が我々の後を付いてきた。
アラスカ出発１９９２／４／１〜ボリビア１９９３／１０ ボリビア出国までの走行距離 約２８９９４ｋｍ 
南米走行１９９３／３／１〜１９９４／６／２７ 走行距離 約２１６９７ｋｍ 
ボリビア走行 １９９３／９／４〜１９９３／１０／１４ 走行距離 約１２１０ｋｍ  |
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２５カ国目のボリビア国境は賑やかではあるが、以前の中南米諸国に比べるとどこか静かだった。しつこい両替商もおらず、のんびりとしている雰囲気がある。 インディヘナのおばさんが私の近くにやってきて、 「ねえ、両替しない？１ドル４．２０ボリビアーノよ。」 と言った。私はおばさんと、とりあえず１０ドル分を両替した。そしてコスタリカ以来になるだろうか、時計の針も１時間進めた。
ボリビア しばらくの間はこの通貨、ボリビアーノと一緒。  ボリビア入国手続きは難無く完了。私もパティも問題無く入国。 国境を過ぎると、１５ｃｍくらいの大きさの石を路面に敷き詰めたガタガタ道が始まった。わずかな区間だけかと思ったのだが、数ｋｍに渡って続いたので、パティの口からは早速文句が飛び出た。 「もうイヤー、こんな道！」 進んでいるのか、歩いているのか分からないスピード。彼女は相当尻も痛いらしい。私にとってもこんな公道を走るのは結構大変。リムに負担が掛からないように歩いて押した方がいいのでは？とさえ思った。
ボリビア 文句を言いつつも石ボコだらけの道を走るパティ。  しばらく走ると、コパカバーナと言う集落があった。ここで尻の痛みを解消させるべく休憩。村の中心近くにあったお店で、気さくなおばさんと会話が始まった。何の会話からか、ペルー人の評判の話しとなり、おばさんは、 「チリでもボリビアでもペルー人は泥棒として活躍していて、印象は余り良くないわね。」 と言う内容の話をした。ペルー出身のパティはショックを受けた様子で、 「ペルー出身って言わないで・・・」 等と言い出す始末。ペルーを出て初めて、彼女も自分の国の評判を知った様子だった。村で食料などを買い出しして再び出発。 標高２００ｍ程のリマに暮らしていた彼女が、サイクリングを始めたばっかりで標高４０００ｍの急勾配を上ろうと言うのだから、その根性も運動量もすごい。 「ハア、ハア、ハア・・・」 息は荒くしてペダルを踏む姿は男勝り。パティちゃんと言うよりは「パティオ君」そんな雰囲気が彼女には漂っていた。だいたい私とサイクリングに出て、付いてくるなんて、並じゃないな。それにしても、よく走るものだと感心させられた。
ボリビア チチカカ湖畔を眺めながら、きつい急勾配を上っては下る。 
ボリビア 夕刻の光が美しかったチチカカ湖畔。しかし上り坂はきつい！坂を必死で上るパティ。  この日我々がスタートしてから進んだ距離は、なんと１６ｋｍ。初めての女性とのアンデスサイクリングならこんなもんだろうか。これでは先が思いやられてしまう。この日は道路沿いの近くにテントを張って野宿した。
ボリビア こんなところで野宿。  ４０００ｍ近くあるチチカカ湖周辺では、朝夕の気温は冷え込み、日中は日差しがとても強く、Tシャツ１枚で充分。マイナス５度から１５度くらいまでの気温の中でサイクリングする日が続いていた。寒いような暑いようなムラのある気候だ。 我々は湖沿いをゆっくりと走って行った。パティを気遣ってか、スピードも５ｋｍとゆっくりで、休憩がとても多い。思うように進まないのだが、周囲に見る景色がこれまた美しく、チチカカ湖と空の青さは飛び抜けて美しかった。私はいいアングルを見つけては先に行って写真を撮ったりと、良いように彼女をモデル代わりにして走った。途中どこからか一匹の野良犬が我々の後をついてきた。
ボリビア 我々の走ったチチカカ湖畔沿いの道。とにかく空と湖の青さがたまらなくきれい。一匹の野良犬が私達の後をずっと付いて来た。
ボリビア チチカカ湖畔沿いの道。ユーカリの木々を眺めながらラパスを目指す。 
ボリビア 野良犬と遊ぶパティ。周辺の道は意外にもハード。 
ボリビア ゆっくりの走行。犬もゆっくりと歩いて付いてきた。  ティキーナと言う村から渡し舟でチチカカ湖を渡って行く。ここで５ｋｍほど付いてきた野良犬ともお別れ。パティは、 「イヌも連れて行こうよ。」 などと言い出すが、 「それは無理だよ。」 ちょっと寂しげな顔をした彼女が可愛かった。
ボリビア チチカカ湖は水深が深いので渡し舟で渡る箇所もある。  お昼はまともなレストランに入り、トンカツ定食のような美味い料理を注文。一人３００円ほど。南米の最貧国ボリビアにしたらこの値段は少し高い？気がしたが。 その後チチカカ湖畔を背後に、いよいよラパスへと向かって行く。パティもゆっくりだが、確実に前進している。
ボリビア アンデスの山々を前方に首都ラパスを目指した。 
ボリビア 大自然の中を汗水流してペダルを踏み出すと、なぜか誰もがイイ笑顔をして見せる。日に焼けた笑顔を見せるパティ。  ９月６日。 「今日は必ず首都のラパスに着こう。」 そう２人張り切って出発。昼過ぎまではハイペースを保ったが、夕刻近くになると、のんびり。ペルーのプーノから走り始めてからの我々の１日の走行距離は３０ｋｍ、２０ｋｍ、５０ｋｍ。情けないペース。初心者の彼女とならこうなってしまっても仕方ないか。 チチカカ湖にさようならを告げ、ラパスに向けて我々は田舎道を走った。遠くに見えたアンデスの雪山も、ペダルを踏む度に距離を縮めてその姿を大きくしている。いよいよラパスに向けてラストスパートと言ったところだろうか。
ボリビア ６０００ｍ級の山々が次第に前方に近づいてきた。やはり迫力がある。 
ボリビア 我々が走っていると、地元の少年が必死に走って付いてくるではないか。標高は４０００mもあるというのに。 
ボリビア 川で洗濯するボリビア村民。水は冷たそうだが何と雄大な洗濯場だろうか。  ２人必死にボリビアに向けて走った甲斐があり、当たりも暗くなった頃、ようやくすり鉢状の首都ラパスに到着することができた。 ガイドブックを頼りに安宿に投宿。このラパスの街では、雑用や今後の走行の準備をしてボリビアを南下して行くことになる。
ボリビア 標高３６００ｍのボリビアの首都のラパスに到着。すり鉢状の街だ。 
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